ナイトライド・ニュース
ナイトライド・セミコンダクター(徳島県鳴門市)は世界で初めて紫外線発光ダイオード(LED)の量産を行った会社だ。現在でも紫外線LEDを製造しているのは同社と日亜化学工業(徳島県阿南市)の二社しかなく、「この分野に限ればシェアはトップ」(村本宜彦社長)という。
通常のLEDは携帯電話の液晶用バックライトや自動車のインパネ(計器板)などでの利用が中心だが、紫外線LEDはそれと異なる分野で使われている。その一つが光触媒を使った空気清浄機の部品だ。ナイトライドが製造している五種類の紫外線LEDのうち、最も波長の長い375ナノ(ナノは10億分の1)メートルは主に、この分野向けに出荷されている。
370ナノメートルの紫外線LEDは紙幣識別用センサーの需要が急増している。銀行のATM向けに大きな受注があり、今年に入ってからの販売量は去年の10倍に膨らんでいる。
海外向けによく売れているのが365ナノメートルの紫外線LED。半導体回路の腐食防止などのために樹脂膜を硬化する装置の光源として、引き合いが増えている。半導体回路の小型化に伴い、これまで使っていた発熱量や消費電力の多い紫外線ランプよりも、紫外線LEDの方が使いやすくなっている。
さらに、360ナノメートルと355ナノメートルというより波長の短い製品も開発。これだけ波長の短い紫外線LEDを扱うのは現時点で同社のみ。やはり樹脂硬化向けが主体になる見通しで、8月からサンプル出荷を始めた。初年度の売上高は1千万円-2千万円を目指す。
様々な分野で引き合いが増えてきた影響で、2006年3月期は、紫外線LED全体の売上高が前の期に比べ、約五倍に急増したという。将来は医療分野や照明分野などでの需要が出てくる可能性もあり、「10年頃には紫外線LEDの市場はかなり拡大しているのではないか」(村本社長)と期待を寄せている。
ナイトライド社内での製造はLEDの基板作りが中心。リードフレームの実装やワイヤの取り付けと言った後工程作業は外部委託しており、従業員数は少ない。
一方、紫外線LED以外の収入も多く、収益を押し上げる場合もある。
05年3月期からは他社からの研究開発事業を受託し、全体の売上高は1億円を上回った。
同社のコアとなっているのは、元は徳島大学で開発された半導体の結晶成長技術。それを事業化するために2000年4月に設立されたが、当初は青色レーザーの基板製造などが目的だった。投資家からの期待も高く、ベンチャーキャピタルを中心に14億円の資金を調達できた。
ただ、当時はまだ青色レーザーの市場が未成熟の状態。海外から引き合いのあった青色LEDの製造なども含めてしばらく方向性を模索していた同社が、最終的に紫外線LEDに焦点を定めて初の製品を発売したのは02年6月だった。
課題は市場の成長に合わせた生産能力の確保。
需要次第で起業当時に獲得した資金だけでは不足する可能性もある。従業員数の拡大も求められそうだ。「研究開発型」企業から、いかに脱皮するかが問われる。(徳島支局 水口博毅)
【会社概要】
- ▽本社
- 徳島県鳴門市瀬戸町明神字板屋島115-7
- ▽社長
- 村本宜彦氏(44)
- ▽電話
- 088-683-7750
- ▽売上高
- 約7000万円(2006年3月期)
- ▽従業員数
- 15人
- ▽事業内容
- 紫外線LED製造、研究開発受託