Chapter 223
講演でロンドンに行った。学生時代にOxfordで1か月程ホームステイしたが、40年ぶりに訪れた印象は大きく違った。当時はイギリス経済絶不調で逆に日本は破竹の勢いでグローバル化が進んでいた。英国自動車メーカーBLMC(ブリティッシュレイランド)は政府の傘下で経営を再建中でHONDAのエンジンを搭載していた。ホームステイ先は4人家族でお父さんは失業中、お母さんがパートでBLMC社の工場に勤務して家計を支えていた。マクドナルドでハンバーガーを食べるのは贅沢で日本から多くを学びたいとお父さんと会話したことを覚えている。とはいえ為替がまだ300JPY/GBPだったので学生には厳しくマックでお昼という感じにはならなかったし、中華でも食べようかと立ち寄ったソーホー地区のラーメンがおかしな味で食べられなかった。食に鈍感というのは当時のアルアルだったが今は大幅に改善している。今為替は約200円なので物価はスイスと比べるとべラボーに高い感じではないが、為替100円前後のイメージがあるので割高な印象がある。当時9歳のマシュー君と3歳のカレンちゃん(白人)が今どうしているかは不明だがロンドン郊外のたたずまいは規制もあって日本より整然として綺麗なので幸せに暮らしているだろう。古い建物と近代的なビルディングが立ち並ぶ景色はロンドン独特で、珍しい形のビルが夜は華やかにライトアップされる。景色以上に大きく変わった一つが人種構成。統計上はロンドンで白人59.8%、アジア系18.5%、当時は珍しかったBlack 系13.3%、Mixed5.0%、その他3.4%(Global Market Surfer 2020)となっているが、街ですれ違う人々の感じでは白人よりもインド・アラブ系が最も多く、ロックグループQUEENのヴォーカリスト フレディ=マーキュリーのように、かつての植民地からの人の流入が多いのではないかと思った。不法入国者も多く犯罪率の上昇がEU離脱(ブレグジット)に繋がった一つの原因とされるが豊かな高齢者は郊外に移住するのが人気と聞いた。日本も経済立て直しのために、海外人材を積極的に受け入れざるを得ないが、負の側面もあるので先例に習って対策を事前にしておく必要がある。イギリスのGDPは世界6位(IMF2025年)と日本より下だが国民一人当たりGDP23位(IMF2025)と日本38位より上にある。ポンドの強さが理由だが高市円安が今後の日本の国力にどう影響するか気がかりだ。連立政権の弱みで仕方ない部分はあるが相変わらずのバラマキはかつて鉄の女サッチャー首相(1979-1990年)が貫いた小さな政府とは逆を行く。サッチャー首相就任前の英国は、電話、ガス、航空、自動車といった主要産業が国営で非効率な経営からインフレ率が27%と恐ろしいことになっていた。新自由主義を掲げて国営企業を民営化したことでインフレは落ち着いたが1982年には失業者が300万人を超え世界恐慌以来の増加を招いた。総量的な経済政策のケインズ経済学と対象的なミルトン・フリードマンが主張したマネタリズム政策を行った結果だが、高市政権は今のところ時代遅れなケインズ政策で景気を刺激しようとしている。いずれにせよ40年前と現代では経済規模が違い過ぎる。インフレと失業に水鉄砲で挑むようなことにしかならない。ガツンと鋼鉄の意志を見せて財政再建を優先して欲しいところだ!
令和7年12月1日
英国サッチャー首相と高市首相


