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ナイトライド・ストーリー

Chapter 43

政権交代、事業仕分け、脱官僚が今年の流行語ということだが、いかに国民の政治に対する関心が高いかわかる。日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動すると日本国憲法前文に定めているが、ここまで国民が政治に関心が高いのであれば、重要法案は国民投票で決めたらいいのではないか。今や、ほとんどの有権者が携帯やパソコンでメールをやりとりする。いつでも自宅や出先からメールで投票することが物理的に可能となった。国民投票まで行かなくても国民の意見を事前の調査でまとめて、統計結果を国会決議に反映させることは可能だ。

ただ、そのことによって国が良い方向に進むかどうかは別次元の話だ。なぜなら、将来の方向性を決める場合、多数決は無難な方向に意見が集約してしまい、思い切った変革を避ける傾向がある。また、国民に人気のある政策が国の将来にとって好ましくないことも多い。経済力の強化、軍事力の強化、環境力の強化、社会福祉の強化等、いろいろな選択枝がある中で、国として何を重視すべきかの判断は大変難しい。このような場合、一番よくないのは、均等に予算配分することだ。それを避けるためにトップの強力なリーダーシップが要求される。鳩山政権は、閣僚人事を見てもバランスを重視し過ぎて、メリハリが効かない政権運営になっている。ある程度、独裁的リーダーシップを発揮しないと、激動の時代の政権運営は難しい。私は、原点に帰って新興国の国家運営を見習うべきだと思う。これらの国々は、まず経済力を強化することを重視する。これは当たり前の話だ、国にお金がないのに、軍事も福祉もない。国がある程度豊かになってくると、本質が見えなくなってくる。日本は借金できる余裕があるので何とかなっているが、その実態はJALの経営状態と変わらない。国民のご機嫌をとって気前よく2次補正予算なんか組んでいる場合ではない。折角、事業仕分けで浮かしたお金が元も子もなくなる。


行政による景気刺激策が本当に景気を下支えするだろうか。私はむしろ問題点を被い隠してしまい、本来出すべき膿を出せなくしてしまう弊害が大きいように思う。我々は、創業から10年近くの間、何度も危機に直面したが、その度に様々な問題点が浮き彫りになり、強くなった。国だって同じことだ。本来の底がどこにあるかを知ることが、強くなれるかどうかの重要な鍵を握る。バブルの上げ底が抜け、行政助成の底が抜けた本当の底はどこなのか。それを知ることで目標が明確になる。また、人間、いざとなると火事場の馬鹿力が出る。よくないのは、ぬるま湯でゆっくりと茹で上がるカエルの話と同じだ。真実を知ることは辛いかもしれないが、現実から目を背けないで、真正面から受け止めなければならない。失業者数も、雇用助成金がなければ、米国同様10%を超えるのではないか。結局、助成金は、将来借金になって金利上乗せで、国民が背負い込む。その大きな負担を考えれば、今、現実を受け止めて、そのための適切な打開策を打つことが重要である。敵の発射したミサイルが当たる直前にジタバタしてもしょうがない。その時点でできることは、これから受ける衝撃に備える態勢を取ることしかない。そして、その被害状況に応じて、その後の応戦の方法を考えるしかない。弊社が、今順調に事業できている大きな理由は、危機的状況において、現実から逃げず、大きなダメージを受けながらも、致命的損傷を避けてきたからである。もし、現実から目を逸らして、ミサイルは当たらないだろうとか、もし当ったとしても誰かが助けてくれるだろうと甘い対応をしていたら、我々の艦はとっくに沈没していた。


最近、介護の仕事に関して、労働環境が厳しく、就労者が増えないことが議論されるが、我々に言わせれば、甘ったれるな、給料貰えるだけマシと言いたい。以前にも記述したが、民間では実現するかどうかわからない技術開発や設備のために先行投資を行い、新製品を製品化しても、顧客に製品の価値を認めてもらえなければ売上はない。たとえ売上があったとしても、製造にかかった原価より高く売れなければ赤字になる。更に、製品は、人件費を含めた製造コストの遙かに安い新興国と価格競争になる。民間企業は、これだけリスクを冒して、徹夜して死にもの狂いで働こうが、これらのハードルをクリアしなければ給料は出ない。

正直、介護現場なんて厳しい国際競争に晒されている製造業の現場から見れば、ちょろい。だから、人手不足の解決策として介護報酬を増やすというのは冗談としか思えない。もし、そんなことがまかり通るなら、国際競争で採算が合わなくなった中小零細製造業の従業員にも補助金を支給する必要がある。

まあ、問題点は色々あるが、自己改革できなかった自民党より、新しい政策を次々と打ち出す民主党の方がマシに見える。鳩山政権が、閣僚人事ミスによって爆弾を抱えてスタートしたことは懸念材料だが、マニフェストに拘らない柔軟な姿勢を見せていることも救いだ。少なくとも事業仕分けは大ヒットと言っていいだろう。


弊社は創立から来年の4月で丸10年を迎えることになる。設立当初は、誰もがうまく行かないと揶揄した。私は、行政の支援をあてにすべきではないとの信念から、開発資金の殆どを民間のベンチャーキャピタルからの投資で賄った。それは、国民の血税をリスクマネーにすべきではないとの信念に基づく。我々と同様の技術テーマに取りくんだ国家プロジェクトの投資額は、我々がUV-LEDの開発に費やした金額の何倍にも上る。私は、そのような政府支出が無駄だと申し上げるつもりはないが、効率が悪いことは確かだ。歴代ノーベル賞受賞者が、事業仕分けによる科学技術関連予算削減に異を唱えているが、役人の天下り機関をスルーする予算分配には誰もが反対であり、また、その内訳に関しても適切かどうかを議論する必要がある。

結局、予算を生かすも殺すも、それを使う側の心掛け次第。国民ひとりひとりの心掛けが重要。国民ひとりひとりが国をあてにせず、自分の道は自分で切り拓く努力をすれば、日本は素晴らしい国になる。

平成21年12月3日

今はやりの事業仕分けに関して思うこと

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