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ナイトライド・ストーリー

Chapter 42

政権交代という1年前にはあまり現実味のなかったことが実際に起きて、何やら今までとは違った良い意味で変わる予感がする。

私は政治に人並みに関心はあるが、政党には関心がない。どの政党も日本の将来を真剣に考えているのだから、大きな時代の流れの中で見れば大差ない。個々のマニフェストには、おいおいと思えるものもあるが、その程度はご愛嬌だろう。変われない日本人が、とにかく変えたいと動いた今回の選挙結果を歓迎する。

自民党の大敗の理由は至って簡単。団体行動の基本原則を犯したからだ。今でも国民の大多数は、郵政民営化に賛成している筈だ。はっきり言えば郵政公社なんてどうでもよかった。国民は、行政の無駄の象徴として郵政民営化を支持した。そもそも小泉改革は「自民党をぶっ壊す」改革だった。既得権にあぐらをかいている政治家、役人、天下り団体や企業の改革を目指した。従って、前回の衆院選自体が自民党指示ではなく、小泉改革指示だった。しかし、麻生政権が小泉改革を批判するようになって、有権者の怒りは頂点に達した。幼稚園で一番最初に習うのは団体行動だが、団体行動は自らの感情を抑える訓練である。遠足で海に行くか山に行くかを多数決し、一人でも多くが投票した方に全員が行く。もし、山に行って遭難したとしても、海に投票した人は、ほら見たことかと言ってはいけない。多数決とはそのようなものだ。遭難したのは、山に行ったことが問題ではなく、計画に問題があった。改革自体は正しかったが、やり方に問題があった。すべての国民を満足させる政策はない。

閣僚人事を見る限り、遠からず行き詰まるだろう。国の将来を考えれば、このような人事にはならない気がする。自民党が進めて来た改革路線自体は間違っていない。次世代に借金を残すことは、いかなる理由があってもあってはならない。従って、現政権に期待することは、改革の方法を改めることであって、改革に逆行することではない。各政党がお互いの良い所、悪い所を議論し、それぞれのよいところを伸ばして行くような関係でなければ発展はない。お互いが極端な政策を実行しようとすれば、国民は、ジェットコースターに乗っているようなものだ。既に高速道路の無料化、子供手当等、反対多数という調査結果が公表されている。国民が求めているのは、官僚による政治を政治家による政治に変えたいのではなく、誰でもいいから国民のためになる政治をして欲しいということだ。無茶苦茶な年金制度、介護者が喜ばない介護保険制度等、本来目指したことが実態とかけ離れている。

これらの改革に対する不満と世界不況が運悪くシンクロした。今回の不況は、政治不況のように言われているが、そうではない。確かに1929年の世界大恐慌を教訓に制定された銀行と証券を分離するグラス・スティーガル法が撤廃され、本来リスクを取ってはいけない銀行がギャンブルにトチ狂ったことが原因である。その流れを放置した責任が行政にあると言われているが、規制撤廃は以前にも指摘した通り、自動車、家電産業が衰退し、最後の砦IT産業さえもバブルが弾けてしまった米国経済を救う方法は金融の活性化しかなかった。本来、買える筈のない人が家や車をローンで買えるように政策誘導した。これは明らかにインチキだが、インチキで食いつなぐうちに何らかの実体経済を振興する政策を打つべきだった。結局、世界中が宴に酔い、宴の後に残ったのは二日酔いだけだ。

アメリカンドリームという言葉があるため、米国社会は平等なイメージがあるが、事実は全く異なる。富のほとんどを握るアメリカ建国当時からの富裕層と専門職の医者、弁護士、スポーツ選手など、たった5%の人が富全体の60%を握る一方、年収200万円に満たない労働者階級や移民が3割をしめる異常な国だ「超・格差社会アメリカの真実」小林由美著。オバマ政権は、その大多数を占める一般と貧困層の支持を得て大統領になった。オバマ政権の最大の課題は、この格差是正だ。確かに人数では圧倒的に優勢だが、発言力という意味では、富裕層が過半数以上の実力を持つ。

皮肉にも、金融危機が貧富格差をクローズアップするきっかけになったが、富裕層が富を大幅に減らすのと同様に、貧困層も職を失うなど更に生活レベルを下げることになった。

かつての共産・社会主義国でさえ階層社会であったことを見れば、格差をなくすことが困難、むしろ不可能であることを証明している。

それは自然界を見れば明らかである。小動物はより大きな動物の餌になる。同じ種族の中でも、強いものと弱いもので餌にありつける量は異なる。格差を是正するということは、餌を沢山獲るものから餌を獲れないものへの再配分を意味するらしいが、野球メジャーリーグで活躍するイチローと四国アイランドリーグの選手の年俸が違うことを格差と言う人はいない。才能があり努力した者が、ない者より多くの果実を得るのは自然界の道理だ。

従って、格差が存在することを悪のようにいうこと自体がナンセンスであり、むしろ格差がなくなること自体が悪平等だ。すべての人に成功への扉は開かれている。福祉の対象になるのは、ハンディキャップを負った人に限られ、高齢者や子供はハンディキャップではない。

圧倒的支持を受けて誕生したオバマ大統領が、就任半年で支持率を大幅に低下させているが、行政主導による景気回復などあり得ない。それは回復ではなく、社会主義化だ。

歴史的に見ても、行政主導で産業が発展した例は、後進国の場合に限られる。ハーバード・ビジネス・スクール教授クレイトン=クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」にある通り、イノベーションを起こすことは、民間企業でさえ難しい。況や行政をやだ。行政の役割は、国民の努力を引き出すことに尽きる。楽したいだけの甘ったれた根性の人々の尻を叩くことであり、甘やかすことではない。

自然界の法則に反する歪を修正することが、世界共通の政策課題だと思う。それは恣意的に誘導されたのもではなく、水が高いところから低いところへ流れるようなものだ。

まぁ、外野の意見に囚われず、現政権が正しいと思うことをやったらいい。それが民主主義だ。私は、高速道路無料化、子供手当支給大賛成。予想しなかった成果が生まれる可能性もある。机上の理論に囚われる必要はない。

平成21年9月25日

政権交代に思うこと

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