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ナイトライド・ストーリー

Chapter 215

MicroLEDのイベントでWeb講演した。日本にいるとマイクロLEDなどという言葉は死語に近い。ARグラスがスマホに代わる次世代インターフェースになるなんて言おうものなら袋叩きにあう。日本はもう最先端エレクトロニクス機器の分野でイノベーションを起こすようなことはないと断言する。誠に残念なことだが製造業の競争力低下特にディスプレー産業が危機感をばねに新たなディスプレー開発を怠ったことが敗因と言える。液晶TVで栄華を誇ったシャープは単に電卓の数字表示器に過ぎなかった液晶をカラー大画面化することで当時主流だったブラウン管TVを駆逐し世界のSONYさえも捻じ伏せた。富士通が開発してパナソニックが拡大したプラズマディスプレーはコスト的に不利だったこともあって液晶に軍配が上がった。しかし、韓国が日本に追いつけ追い越せで必死に食らいついて開発した有機ELディスプレーの登場で形勢は一変、遅れて投資したものの後追いでは勝てないのは最先端分野の常、傷を深めたに過ぎなかった。そもそも有機ELの技術は日本発なので有機ELをものにできなかったところから日本の没落は始まっていた。私が2010年にシアトルSIDで講演した時にパナソニックの方が私の後に講演して注目を集めていたので記憶に確かだが、あの時はまだ日本が最先端にいるように見えた。ところが直後サムスンとLGがLEDバックライト液晶TV、更に有機ELTVを発売して形勢が逆転した。国内では有機ELの寿命と色再現性の低さを問題視する声が強く自発光による画面の明るさといった長所に目を向ける人は少なかった。(見たくなかったというべきかもしれない)折しもスマホの画面が拡大しインスタグラムの綺麗な静止画だけでなくユーチューブで動画を楽しむ若者は有機ELの鮮明なディスプレーに夢中になった。このように先行する者は新しい技術の欠点ばかりを挙げ連ねて自らを正当化するが、常に新しい技術が古い技術を置き換えて来た。私は2年前までガラケー派だったが理由は重い携帯電話を持ち歩きたくなかったからだ。実際に2年前からアイフォンを使い始めてからはカバンに入れっぱなしにしているので私の携帯に電話を掛ける人は緊急時以外いなくなった。こんな中途半端なものがこれからも変わらずインターフェースであり続ける筈はないがイノベーションとはそういうものだ。講演の後、私の講演に関して全く見ず知らずの方々からメールでコメントを頂いたが、全く同感だとか説得力があるといった肯定的な内容ばかりでなく否定的なコメントもある。技術とはそういうものだ。何が正しいなどというものはない。勝てば官軍となり正しかったことになるが、必ずしも勝った技術が最高の技術でなかったことは歴史が証明している。NHKのマスターTVは未だにCRT(ブラウン管)TVを使っていると聞いた。理由は色再現性の高さ。未だに最新ディスプレーはCRTを超えられない。流石にCRTの製造ができなくなって液晶に切り替わるそうだが新しいものがBESTということではない。俳優トム・クルーズが映画「ミッション・インポッシブル」で掛けるARグラスが最高にクールと思えなくなった人は早めの引退を考えた方がいい。

令和7年3月10日

イノベーションとは

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