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ナイトライド・ストーリー

Chapter 41

第9期定時株主総会も無事終了したところだが、嬉しいニュースが飛び込んできた。なんと、第16回半導体オブ・ザ・イヤー2009(半導体産業新聞主催)の優秀賞に選定されたのだ。それで、先週末、東京、神田の明神会館で、表彰式があり、参加させていただいた。正直に言うと、我々は、そのような賞があることを知らなかったが、2か月程前、記者推薦ということでノミネートされ、最終選考の20社に残っているので、応募用紙に記入して提出して下さいという案内が来た。そこで、まさか賞をいただけるとは思わなかったが、ノミネートされるだけでも名誉なことだと思い応募しておいた。

不況の影響で、例年千件以上ある応募が572件と半分近く減ったことも、有利に働いたかもしれないが、見事、競争を勝ち抜いて優秀賞を獲得した。過去の受賞者の顔ぶれを見ると、LEDメーカーはないので、弊社がLEDメーカーとしては初の受賞ということになる。一般的に半導体という表現はシリコン半導体のLSI(集積回路)を意味するため、窒化物半導体のような化合物半導体は、半導体とは呼ばない。化合物半導体であるLEDを製造するメーカーは、LEDメーカーと表現され、半導体メーカーと区別される。従って、そのような賞を化合物半導体メーカー、それも、弊社のようなベンチャー企業がいただくことには、正直躊躇いもあったが、単に開発に成功したということだけではなく、事業化に成功したという意味も含めて受賞に到ったとの説明を受けた。

また、今までシリコン半導体の発展を支えた「集積密度は、18か月から24か月で倍増する」というムーアの法則に陰りが見え始めたことも、化合物半導体に選考の視点が移った理由らしい。パワー半導体、超高周波半導体、白色LED照明材料として注目される化合物半導体の新たな可能性が、不況に喘ぐシリコン半導体の救世主として期待される面もあるようだ。

因みにグランプリ:三菱電機、準グランプリ:富士通、優秀賞:テキサス・インスツルメンツ、弊社、アナログ・デバイセズという顔ぶれからして、社歴9年のベンチャー企業が、このような賞を貰うのは快挙と言っても過言ではないだろう。過去、ソニーのプレステ2向けCPUや、松下のデジタルハイビジョン用システムLSI、サムスンの16ギガNANDフラッシュメモリーなど、ITの新時代を作ったチップが選出されている。

いずれにせよ、弊社が丸9年を費やして成し遂げたことが、半導体の分野において高く評価されたことは、誠に喜ばしく、従業員一同、大いに歓んでいるが、受賞を機に、この賞に値する価値を身に着けなければならないと手綱を引き締めている。

世界的には、相変わらず不安定な状況が続き、このところ急激に回復しつつあった株価も怪しくなってきた。これからの時代のキーワードは、環境と新エネルギーであり、これらに合致しない産業の生き残りは大変困難になる。私は、今回の受賞企業の製品、技術を見て、大企業の技術が小粒化していることに気付いた。過去の受賞が企業の命運を左右する程の莫大な投資と労力によって成し遂げられたことを考えると、かなり見劣りすることは疑いがない。そのような中においては、僭越ながら弊社のUV-LEDの技術がグランプリを受賞しても、おかしくないとさえ思えた。研究開発自体は、空前の好景気の下で行われた筈なので、現在の不況の影響ではないと思うが、企業の研究開発姿勢が、この10年で大きく変わったことが推測できる。それは、米国発、世界的金融危機の発端になったとも言える株主重視の発想が、利益優先の企業姿勢を生み、短期的に利益を生まない研究開発費の削減に繋がったのではないかと想像する。私は、7年程前、まだ私がこの会社を起ち上げて間もないころ、日本の某半導体メーカーのエンジニアが、弊社の製品を見て、「本来、こういう研究は、うちがやっていなければならないのだけれども、それができない社風になっている」と漏らしたことを思い出す。

この推測が当たっているとすれば、現在の半導体不況は、企業が思い切ったチャレンジをしなくなり、他社との差別化が図れなくなったことが原因である。従って、ただ単に金融危機によるマーケットの縮小による影響と片付けるのは危険だ。

この金融危機から世界経済が本当に立ち直るためには、まず、企業が誰のために存在するのかという根本原理に立ち返り、そこから改革を進める必要がある。私は、会社法に定める通り、企業が株主のために存在することを否定するつもりはないが、それは企業がまず従業員のために存在するという大前提の上に成り立つことを忘れてはいけない。従業員の幸せがあって始めて株主を含むステークホルダーの幸せが実現するべきで、現在のような従業員の犠牲の下に株主の利益が存在する社会はおかしい。


第16回半導体オブ・ザ・イヤー2009講評

優秀賞 ナイトライド・セミコンダクター株式会社 UV-LED「NS375L-ERLM」

同社では、波長400nm以下のLED(発光ダイオード)開発に早くから取り組みを開始し、短波長紫外線LEDの製品化を図ってきた。同製品においては、発光層に四元混晶AlInGaNを採用して短波長化し、さらに結晶転位密度を低減し、組成ゆらぎを増大する結晶成長技術およびプロセス加工技術を用いて、波長370nm前後の領域で高効率化を実現した。今後は、照明、ディスプレーなど蛍光体光源、顕微鏡や露光機用などの光源、さらには医療、バイオ、紙幣識別装置、DNAチップなどの光源として、応用が期待される。

第16回半導体オブ・ザ・イヤー2009 優秀賞

平成21年7月9日

苦節9年の快挙に思うこと

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