ナイトライド・ニュース
2000年に設立されたナイトライド・セミコンダクター(株)(徳島県鳴門市瀬戸町明神字板屋島115-7、TEL088-683-7750)は、世界で初めて紫外線LEDの量産化技術を確立した産学連携ベンチャーである。GaNウエハー、紫外線LEDウエハー、紫外線LEDチップ、紫外線LEDランプ(波長355nm~400nm)などを供給している。代表取締役社長の村本宜彦氏に、足元の業績や製品開発状況について話を聞いた。
-足元の業績は。
村本 08年度の売上高は前年度比約80%増で、経常利益も大幅に増大した。09年度も増収増益を予想しており、初めて2年連続で黒字を達成できる見込みだ。当社は紫外線LEDという他社にない新しい技術を扱っているので、不況の影響を受けていない。むしろ不況に入って水銀ランプからの切り替えが加速している。好況期には設備刷新にまで手が回らないこともあって、逆に代替の動きは鈍化していた。今は景気悪化と省エネ、環境志向の高まりが切り替え需要の後押しになっている形だ。
-世界最高の外部量子効率51.6%を達成した。
村本 09年5月に波長400nmで、通常の樹脂砲弾型として世界最高の外部量子効率を達成した新製品、「NS400L-ERLM」を発表した。設立当初には、紫外線LEDで外部量子効率をここまで上げるのは不可能だなどと言われていたが、見事に結果を出すことができた。07年が一つの転機で、それまで以上に格段に効率が向上した。結晶構造の改良でブレークスルーが起こったことや、樹脂や電極にITOを採用したことなどの要素が重なって、壁を越えるきっかけとなった。
今後も引き続き効率向上を目指し、1年以内の効率60%達成を目標にしている。出力については、ユーザーからより高出力を求められるため、さらなる出力向上に努めている。また、今後の課題として、コストの削減がある。将来的に紫外線LEDを照明用途として展開するためには、コストを現状の約10分の1に抑えなければならない。そのためには、さらに結晶性を高めることで、複雑なチップ加工を必要としないシンプルなチップ構造およびパッケージに仕上げることが重要になってくるだろう。
-生産体制について。
村本 現在、本社工場では月産300万チップ規模で紫外線LEDウェハーを生産している。需要が伸びてきているとはいえ、当面は設備投資を行う考えはない。設備や拠点を増強すると、どうしてもコスト面で折り合いが付かなくなるからだ。当社は設立以来ずっと苦しい時期を過ごし、8年経ってようやく事業が軌道に乗ったと言えるところまで来た。設備と研究開発への投資資金を2、3年で取り戻すのは難しい。それを考えると、今は増産投資を行う時期ではないだろう。ニーズの増加は、他社にライセンスを提供してOEM方式で製造する形でカバーする。折りを見て株式上場することも検討していたが、リーマンショック以降の株式市場の冷え込みによってメリットがなくなっている。上場についてはマーケットが回復してから改めて考えたい。
-紙幣識別機向けなど新規用途が増えている。
村本 紙幣識別機用の紫外線LEDは、ドル、ユーロ、元といった海外市場向けに売り上げを伸ばしている。不況に左右されずに順調に需要が推移しており、今後も伸びが期待できる。また電子部品などの樹脂硬化用の光源や、医療用分析装置など新たな用途も拡大している。従来は紫外線を出せるコンパクトな光源がなかったため、紫外線LEDを採用することでより小型の検査装置を作ることが可能になる。
ほかにも、多種多様な用途に使いたいという引き合いが多数来ている。紫外線は物質に働きかける力が強く、応用できる分野が広い。紫外線LEDが他のLEDと比べて優れている点の一つだ。ゆくゆくは大きな発展が期待される照明分野とともに、紫外線LEDの潜在能力が本領を発揮するのはまだこれからだ。他社が手がけていない事業という、最大の武器を手に今後も着実に技術力向上に注力していく。