Chapter 67
12期の決算を終えた。お陰さまで4期連続増収増益となり、リーマンショック後の世界的混乱にも関わらず好調を維持することができた。このように書くと順風満帆のように聞こえるが、実際にはかなり苦しんだ。昨年秋、主力の製造装置にトラブルが発生し、復旧に3カ月以上要した。このことから一部の顧客には多大なご迷惑をお掛けすることになり、私の仕事は顧客へのお詫び行脚となった。結晶成長の装置は非常に神経質であり、ご機嫌を損ねると、再現することが難しい。それが他社の参入障壁になっているのだが、都合の悪いことに他の装置もフル稼働の状況にあり、代替生産が利かなかった。正直に言うと、あの時点では、故障した装置復旧の目途は全く立たず、供給できないと土下座を覚悟した。土下座して済む問題でもなく、途方に暮れる状況だったが、現場の奮闘努力の甲斐もあって比較的早期に製造を再開することができた。伊達に「ものづくり日本大賞」の経済産業大臣賞を受賞していないと実感したが、その他にも様々な問題が発生して苦しんだ1年だった。
ここ数年、エコブームに乗って特にアジアにおけるLED分野への投資が活発だった。太陽電池、液晶パネル同様、台湾、韓国のみならず中国の誘致合戦の影響もあり、製造装置メーカーは過去最高の決算に沸いた。青色LEDの発明から20年以上経過し、有力特許が期限切れとなったことも関係している。そして、これら過剰投資の反動と液晶TVの販売不振で、昨年度は多くのLEDメーカーが過剰在庫を抱え込んだ。皮肉にも大幅な価格下落は白色LED照明の普及を促したが、メーカーは利益を上げられない消耗戦に突入した。
UV-LEDの分野は、未だに参入が容易ではなく、波長の長い400nm辺りには新規参入も見られるが、可視光のLEDと違って、物質に働きかけて蛍光物質を発光する、樹脂を硬化する、空気を浄化するといった機能を発揮する必要があることから、効率と性能の安定性が重要になる。従って、海外との取引においても円高の影響は受けていない。また、10年以上にわたって各アプリケーションメーカーと共同で開発して来たアドバンテージは大きく、安いUV-LEDが出てきたからと言って脅威になるとは感じていないが、長期的には対策の必要性を感じている。具体的には、発光効率を高める事で、少ない数のLEDで同じ機能を発揮する、高効率化こそが最良のコスト削減と認識している。幸い国の先端技術開発に対する補助政策の恩恵もあり、NEDO及び経済産業省から高効率UV-LEDの開発補助を受け、成果が出始めている。
以前にも、記述したことがあるが、最先端であるということは、色々な意味でアドバンテージを生む。最大のアドバンテージは情報だが、顧客、製造装置メーカー、材料メーカーその他から、最新の技術、提案が寄せられる。国の支援もその一つだが、オリンピック代表に選ばれると、スポンサーや国から様々な支援が受けられるのは企業も同じだ。
私は、これから1年が今後10年の分水嶺になると認識している。2000年設立当時、同時に産声を上げた韓国、台湾のLEDベンチャーはほとんど姿を消した。今後の発展は、この1年が勝負になる。
平成24年06月20日
第12期定時株主総会にあたって