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この度、波長385nmの紫外線LED(以下UV-LED)上に100nmサイズの微細加工を施したPhotonic Crystalフォトニック結晶(以下PhC)の開発に成功し、光閉じ込め効果を確認しました。
1.背景
フォトニック結晶とは、屈折率が周期的に変化する構造で、光を小さな領域に閉じ込め、光と物質の相互作用を高めることに利用されています。光の波長に適合したサイズの周期構造を人工的に作れば、通常の物資では不可能な光学的性質を持つメタ物質を実現することができます。近年、半導体微細加工技術の進歩により、光スイッチ、レーザ、光メモリ、レーザ光源といった光デバイスに於いて、低消費電力での基本動作が確認されています。 (NTT研究開発Web参照)
2.意義
発光ダイオード(以下LED)の光は、発光層に於いて発光し、全方位360°に光が照射されるので、チップ内部のリフレクター構造によって、前面から光を取り出します。LEDチップは、すり鉢状のパッケージに実装され、更に、光学レンズによって、指向角を狭くすることで、照射範囲をコントロールします。紫外線は、樹脂、ガラスに吸収されるため、石英等のUV透過率の高い光学レンズが使用されますが、コストが高いこと、レンズと半導体材料の屈折率差による損失が発生するため、効率が悪化します。そこで、レンズを用いないで、指向角を制御するUV-LEDが待望されています。
3.応用
UV-LEDは、有害物質を含まないクリーンな半導体製造用光源として、紫外線(水銀)ランプに置き換わることが期待されています。UV-LEDにフォトニック結晶加工を施すことで、高効率、省エネ、環境に優しいUV光源が実現できます。また、近年、開発が活発になっているマイクロLEDディスプレイ用光源として、UV-LEDとRGB蛍光体を組み合わせてフルカラーを得る方式のディスプレイの開発が進んでいます。マイクロサイズのUV-LEDチップが発する光を光学レンズで制御することは、コストが高くなるばかりでなく、微細なレンズアレイを製作することが困難です。そこで、フォトニック結晶を利用することで、安価に効率的に光を制御することができます。 その他、UV-LEDに限らず、LED照明に応用される青色LEDにフォトニック結晶加工を施すことで、現在のLED照明よりも、高輝度で、低消費電力の照明を安価に実現できます。