Chapter 100
いよいよNSストーリーが100回を迎えた。これも皆様のご支援の賜物と心から御礼申し上げる。本当にありがとうございました。この会社が、よくもここまで生き延びたというのが本心だし、周囲も同感だろう。しかし、窮地に至った時、様々な人、偶然の出来事の巡り合わせで、それらを切り抜けた。私は信心深い方ではないので占いは全く信じないが、何かしら大きな力が至らない私達を見守ってくれていたかのようだった。
誰もがやるだけ無駄と言った15年前、波長350nmのUV-LEDを開発、製品化した。当時の性能たるや酷いもので、光出力は1ミリワットに届かず、納めたベアチップの電極がワイヤーボンディングで剥がれた。今となっては笑い話だが、当時は顔面蒼白だった。それが今や1円玉大の1素子(COB)で光出力20Wを超える。なんと2万倍以上向上した。それでも値段は変わらない。この間のLED技術の進歩は目覚ましかった。ノーベル賞を受賞しなかった多くの人々の勝るとも劣らない無数の貢献がそこにあった。
UV-LED製品の発光効率は波長385nmでは50%を上回り、青色LEDを上回った。その理由は、青色LEDがコストの厳しい白色照明用に使用されるのと異なり、UV-LEDは付加価値の高い用途に使用されるため、複雑な構造を作り込む余地があるからである。
世界的に景気が怪しくなっているが、生活の質を低下させることなく、環境負荷を低減するという産業界全体の目標は変わらない。どんなに苦労しようとも社会に貢献していると感じることができることは幸せである。UV-LEDが売れれば売れる程、地球環境負荷が低減するという相関関係が揺らぐことはない。
未だに露光、樹脂硬化といった産業用途から殺菌といった身近な用途に至るまで、膨大な量の水銀ランプが使用されている。水銀ランプはUVを発光するまでに数分間待たなければならず、消費電力も大きく、発光効率が数%しかない上、寿命は1000時間しかない。
UV-LEDは、60ナノ秒で発光し、効率が50%を超え、寿命も数万時間。環境汚染物質を一切含まず、廃棄物も大幅に削減できる。
2020年、東京オリンピックの年に、水銀を全廃すると謳った水俣条約は、実は笊(ざる)条約である。その理由は、製造プロセスで使用する水銀を除外してしまったからだ。そもそも条約自体には何の強制力もないが、除外した理由は、代替手段がないという産業界の猛反発による。確かに、寿命の短い水銀ランプ交換で儲けることに慣れてしまった産業界には死活問題である。しかし、これだけ地球温暖化が表面化し、異常気象が頻発する状況において、その判断は賢明と言えるだろうか?一日も早く水銀ランプを全廃し、むしろ、UV-LEDの潜在的特性を生かした新たなアプリケーション、新たな産業を創出する方がムーアの法則が行き詰まり、閉塞感漂う業界を活性化することになると考えることはできないだろうか?
私事で恐縮だが、53歳。100回の節目に過去を振り返り、UV-LED伝道師としての使命を再認識した。天命を全うするため、抵抗勢力のいかなる妨害、誹謗、中傷にも屈しない。
ハイパワーUV-LEDモジュール
波長365nm/Po:21.2W, Tj:150℃, Ta:25℃(30A)
波長385nm/Po:32.9W, Tj:135℃, Ta:25℃(30A)
平成27年09月09日
五十にして天命を知る