Chapter 99
7月中旬、IEEE主催のトピカル・ミーティングがバハマで開催された。講演依頼が来た時、DUV開発に関心が移った今、なぜ私にと思ったが、思い直して承諾した。理由は、こんな機会でもなければカリブ海に浮かぶバハマに行くことはないし、また、DUVの開発者達に、今尚続くNUV技術開発の現状と、我々の経験を伝えることで、何かの役に立てるかもしれないと。
聴講者といっても、すべての参加者が招待講演者なので、少数ではあるがハイレベルな講演だった。持ち時間30分の講演が始まった時点では、今更なぜNUVの講演なのかという顔の聴講者もいた。
しかし、15年を経た今尚、発光効率100%を目指して技術開発は継続され、当時1ミリワットに満たなかった光出力は2万倍に達し、 そればかりか製造コストを下げる技術開発も延々と続けられている姿に、最後には全ての聴講者が大きな拍手で迎えてくれた。
DUV開発は、マスコミの注目を集め、VC、大企業が関連ベンチャーに投資したブームから3年余りが経過した。熱狂が、発光効率、更にはビジネスという壁にぶち当たり、正気に戻る頃だ。我々も、創業から3年経過した頃が最も難しい時期だった。投資家は、結果を求め始め、技術者達は思うように進まない技術開発に焦りを感じ始める。調達した資金は底を突き、経営者は、次のパトロン探しに奔走するが、2匹目のどじょうは見つからない。
今、DUVは、そんな状況だろう。だから、我々の経験を交えながら激励も込めて、UV-LEDが切り拓く未来を語った。
技術開発は、一筋縄では行かないが全て理論的に立証できる。酒井教授は、2000年当時、青色LEDがノーベル賞を貰えるかという私の質問にこう答えた。青色(GaN系)LEDの開発は、赤外から始まったLED開発の延長線上に過ぎない。確かに物質の振舞いが従来の材料とは異なるけれども、基本的なセオリーは赤外から変わっていない。だから難しいのではないかと。結局、予想は外れたが、真理を突いている。
私は、DUVに関する最新の研究開発を聴講しながら、この言葉を思い出していた。最先端と言われる研究開発は、材料の種類は変わったけれど、やっている内容は同じに見えた。だから、私のNUVの技術開発と応用に関する講演が、時代遅れで聞くに足らないと感じるどころか、ある意味新鮮でヒントになったかもしれない。
トンネルは抜ける迄は、真っ暗闇なので疑心暗鬼になるが、突き抜ける日を信じてチャレンジし続けることが重要だ。後10年も経てば、DUVもNUV同様、W単位の光出力を掲げ、最先端の開発者は、百ナノ台のLEDを開発しているだろう。
トンネルの先にはバハマのような太陽が待っている。
平成27年08月07日
バハマで思ったこと