Chapter 105
3/11にLED NEXT STAGE 2016で講演した。今回も立ち見が出るほどの盛況でUV-LEDへの関心の高さが伺えた。大手LEDメーカーが参入を発表したが、それは一方でそれ程までに業界の景気が悪いということでもあるのだろう。
3.11という意義深い日の講演だったので感情的になった部分もあった。お気に障った方がいらっしゃればこの場でお詫びしたい。誰のせいでもない自然災害で多くの尊い命が奪われ、今でも多くの方々が不便を強いられている。特に原発に関しては一歩間違えば東日本に人が住めなくなった可能性があったと番組で明かされた。体面にこだわって甘い判断を下す政治家と会社上層部、そんな中現場の的確な判断で窮地を切り開く様はベタなフィクションドラマそのままだ。このような教訓と武勇伝は後世に語り継ぐべきだろう。
日本が背負った重い十字架から目を背けても重みは減らない。重さを感じなくなるよう足腰を鍛えなければならない。そのような意味合いからも原子力を棄てるのではなく安全に活用できる技術革新が必要ではないか。如何なる災害、テロに対しても安全と言える技術を確立し人々の役に立てることで本当に痛みを克服したと言える。日本が経験した悲惨な経験は、将来発生するかもしれない各国の原発問題に対して貴重な経験となることは間違いない。ピンチをチャンスに変える勇気と有能さを日本人は持つと信じる。
さて、関心高まるUV-LEDだが、紫外線ランプのマーケットは、世界全体で500億円程度でしかない。白色照明が1兆円を超えていることを鑑みればほんの僅かに思えるが、青色LEDのマーケットも当初は携帯電話のタッチパッドやイルミネーション等の数百億円程度のマーケットでしかなかった。それが携帯電話(後にスマホ)やTVやPC液晶バックライトとして爆発的に需要が増えた。従って、UV-LEDも紫外線ランプの用途を置き換えるだけではなく、まったく新しいアプリケーション開発が重要になる。そのためには、さまざまな分野との協業が今後重要になる。先日、360nmのUV-LEDで蚊を捕獲する空気清浄機が発表されたがこういう用途開発をして行かなければならない。
弊社はこの分野で16年間実績を積んできたので、UV-LEDビジネスの難しさをよく理解している。たとえばセンサーとして使用する場合、ただ単にピークスペクトルが指定範囲内に収まっていればいいという単純な話ではない。駆動電圧、スペクトル形状に至るまで作り込む必要がある。また可視光をカットする高価なフィルターを省くためイエロールミネッセンスと呼ばれる不純物準位による発光現象を抑えなければならない。
LEDは、ノーベル受賞でもわかるように日本がマーケットシェア、技術的にもトップを維持している数少ない産業と言える。微力ながら東日本大震災の傷を癒すために更に活性化し、悲しみを克服する助けになりたいと心から念願する。
平成28年03月25日
3.11の5年後に思ったこと