Chapter 109
英国民はジョーク好きだが、今回の国民投票もジョークか?
否(いな)!これこそが英国人である。英国の某TV番組が広島と長崎で被爆した日本人を「世界一運の悪い人」と茶化したが、将来、英国民は、「自国を滅ぼした国民」と自らを茶化すことになるかもしれない(あくまでも趣味の悪いジョーク番組としてのジョークだが・・・)。
島国であることにおいて、英国は日本に似ている。しかし、ドーバー海峡は40キロメートルに満たず、94年のユーロトンネルの開通によって欧州大陸との距離は更に縮まった。日本人的には欧州と一まとめにしてしまうが、ユニオンジャック(グレイトブリテン)の栄光を未だに引きずる高齢者も多く、高齢者が離脱票を多く投じたという事情もうなずける。誇り高き英国人には移民の流入は耐え難いことだろう。
民主主義の悪弊と評する人もあり、プーチン大統領がほくそ笑む理由もよくわかる。衆愚政治という言葉の通り、単なる人気投票で国の将来を決めれば愚に陥ることもある。
次はフランスと言われているが、フランス人の方が現実主義と捉える。第二次世界大戦に於いて戦局不利と見るや、ドイツにあっさり降伏したように、レジスタンスは暗躍しても表向きはうまく立ち回るだろう。おかげでパリの街は宝石箱のように美しい。
それに比べて、英国人は頑固だ。制空権を失い度重なるロンドン空襲で歴史的建造物をことごとく破壊されても、地下でじっと耐えた。モスクワ侵攻でのつまづきもあって破竹の進撃が弱まったこともあるが、最期には忍耐力が勝利した。
今回の投票の裏には、ユーロというドイツを中心とした枠組みへの抵抗という意味合いもあるのだろう。戦争には勝ったが、経済的にドイツに後塵を拝する歴史的対抗心が出たのかもしれない。
栄華を誇ったグレイトブリテンとは言っても、その暮らし振りは質素だ。食べ物は、フィッシュ&チップス、フランス料理のフルコースとは正反対。建造物にしても装飾、絵画で飾りたてたベルサイユ宮殿に対し、質実剛健、機能的。英国貴族もしかり、地味なファミリーカーに乗って、職場は図書館や博物館だったりする。それこそが、英国紳士・淑女なのだ。シティで高級車を乗り回す成り上がり者は、英国人らしくないと見る向きもある。
従って、国民投票のやり直しはない。残留しても、英国民が本当の意味で幸せになれる日は来ない。経済発展ではなく、独自性、即ち英国人らしさを選択した。
英国人の意地を見た。寧ろ次はドイツで離脱派が優勢になったりしないだろうか?メルケル首相の怒りの表情に焦りが見える。何が起きてもおかしくない時代、 10年後、20年後笑うのは英国人かもしれない。
一見損と見える決断を下した英国人の先行きを見守りたい。
平成28年07月01日
英国人の気骨