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ナイトライド・ストーリー

Chapter 110

リオデジャネイロ・オリンピックは熱戦の最中だが、金メダルを取るためには心臓に毛を生やすくらいのことをしなければ駄目だなと感じる。日本選手の活躍は、国を挙げた地道な強化トレーニングの成果と言っていい。根性だけで戦った昔と違って強化種目には特別な施設と特別なトレーナーが万全の態勢で選手をバックアップする。水泳、柔道、体操といったお家芸の復活が嬉しい。

選手が能力を発揮するためには、戦略と戦術が重要になる。敵そして自らの強みと弱みを分析して勝つ方法を練る。完璧な選手は存在しないので、優勝候補でも下位の選手に屈することもある。冷静さを保つことの難しさを実感するが、一方的に試合を進めていた選手が突然崩れる姿を見ると、好調が慢心を生み、守りに入ったところを、逆に失うものがなくなった相手が攻めに来たことが読み取れる。「攻撃は最大の防御なり」とは真理を捉えた名言である。日本選手が強くなったのは身体能力は兎も角、精神面が強化されたことも大きい。不意を突かれて動揺しないようあらゆる可能性をシミュレートしてあるのだろう。

ビジネスも、スポーツと同じように世界の強豪がひしめく中を勝ち進まなければならない。日本の経済競争力の低下が指摘されて久しいが、日本の産業は、戦後の荒廃の中、国策として様々な産業が強化スケジュールに則って保護育成された。欧米に追い付け、追い越せの号令の下、特に1973年から持続的な経済成長が続き、先進国の仲間入りを果たした。

私が幼少の頃は、欧米は憧れであり、時計、家電製品、車等、すべての舶来品が眩しく輝いて見えた。そして、1985年プラザ合意以降、日本を骨抜きにした象徴的な政策、総合保養地域整備法(通称リゾート法87年)によって、飲めや唄えの狂乱バブルへの道を突き進む。日経平均は3万円の大台を超え、日本中の山がゴルフ場かテーマパークになるかと思われ、ハワイが将来日本になる(カリフォルニア州全土が皇居と同じ値段)と冗談を言った。

政策的に興味深いのは、優勝候補になってからの号令が、「働かずして稼げ」になったこと。経済摩擦を緩和するための内需振興策とも言えるが、経済政策はオリンピックのように純粋ではなく政治色が濃い。

バブル当時、日本とは対照的に米国ではマンハッタンがハーレムになり、ホームレスが地下鉄の駅に溢れた。その後、共和党に代わって政権に就いた民主党ビル=クリントン政権下に於けるITバブルによって経済復興を成し遂げる。もともと軍事用通信技術として開発されたインターネットを民間に開放し、一方で新興企業が一夜にして時価総額で大企業になる株式市場をナスダックとして創設し、アメリカンドリームを現出した。

民主党はしたたかである。経済発展のために移民(不法入国者でさえ)をうまく活用して来た。しかし、今度の大統領選では、そのしたたかさに終止符が打たれるかもしれない。思いがけなかった英国の決断。それに続くのは米国かもしれない。そうなればヒラリー=クリントン候補には皮肉な結果となるが、経済優先が幸せに繋がらないということであれば、幸福とは一体何か?人類究極の問いに対する模索が続く。

平成28年08月16日

リオに思うこと

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