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ナイトライド・ストーリー

Chapter 112

米国大統領選挙がいよいよ終盤に差し掛かっている。他国のことながら、時代を反映していて興味深い。二枚舌というのは一般的にはよくないこととされているが、本心ではないという副大統領の釈明が苦し紛れで面白い。二枚舌を使う大統領が誕生するとすれば、本気で核戦争を心配しなければならなくなる。映画俳優なら台本通りだが、本心ではなく発射ボタンを押されたのでは洒落にならない。

今、世界中で、従来の価値観では国民を納得させられない変化が起きている。よい学校を卒業して大企業に就職するといった画一的な価値観が、リストラでホームレス、若しくは、勉強しなくても、ベンチャー企業や投資で一発当てればお金持ち、更には、せっせと積み立てた年金が受け取れるかといった様に、先の見通しが利かないことにストレスを感じている人が増えている。だから、支離滅裂な発言が新鮮に映る。

熾烈な生存競争に敗れ、所謂「負け組」という不名誉なレッテルを貼られた人々は、自暴自棄になり、核戦争で今の価値観すべてが崩壊することを本気で望んでいる。各地で頻発する自爆テロは宗教的対立が背景にあるが、細かく見れば、国家間、地域間、人種間、性別間と様々に入り乱れてストレスが増大し、怒りの矛先を何処にぶつけるか探している。

英国のEU離脱投票もその流れに乗っているが、英国は、80年代不況で苦しんだ。しかし、金融取引の中心地シティを開放し、海外の金融機関が活発に取引をすることでマーケットを活性化した。この状況を自国選手が活躍しなくなったテニスに例えてウィンブルドン現象と皮肉った。狙いは的中して経済は活性化したが、目の前で外国人金融プレーヤーが活躍することがストレスになった。

85年当時、私が学生時代にホームステイしたロンドン郊外の家庭は4人家族。5歳の男の子と3歳の女の子の4人家族。お父さんは失業中、お母さんがパートでかろうじて生計を営んでいた。自国自動車メーカーは苦境に立たされ、日本メーカーが現地生産を始めた頃だった。まだ、1ポンド300円の時代なので、物価は恐ろしく高く、マクドナルドでハンバーガーを食べると2000円近くになった。ステイ先の両親にそのことを話すと、彼らにとってもマクドナルドは贅沢品だと語った。実際にポンドは対ドルで1.05ドルの最安値を付けていた。また、お土産も兼ねて地元のお店で衣服を購入したらMade in Chinaと表示してあった。

英国も米国も、過去の繁栄を轢き擦って、「あの日」に帰りたいと願う人々が多い。しかし、現実はそれ程甘くない。保護主義的な政策を取れば、期待する「あの日」でなく、都合の悪い「あの日」に帰ってしまうことになる。

メジャーリーグやオリンピックを全て白人で揃えて、盛り上がるだろうか?間違いなくオリンピックメダル獲得数一位の座からは転落する。

南北戦争最中の第16代大統領エイブラハム=リンカーンの有名なゲティスバーグ演説「人民の人民による人民のための政治」の意味することを、今一度思い起こす時だ。この一節の意味するところは、基本的人権すなわち財産、人命さえ保障されない時代、政治は、与えられるものではなく、自らが努力して勝ち取り、行うものだと説いた。

混沌とした時代、不人気でも正しいことを正しいとはっきり言える大統領が必要だ。

平成28年10月12日

米国大統領選挙に思うこと

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