Chapter 118
6月中旬からピュア・シリーズを発売する。弊社としては初めてのB to Cビジネスなので、不安要素も多いが、前回触れた通り、従来のビジネスモデルに対する挑戦的意味合いもあるので、何やら待ち遠しい。
同じ空気清浄器でありながらメカニズムは全く異なる。また、殺菌器は一般家庭に馴染みが薄いが、地上400km上空を90分で一周する国際宇宙ステーションの中で宇宙飛行士の長期滞在を可能にしている先端技術が家庭でも使えるようになったらワクワクするではないか。売れる、売れないは別にして、そんな時代を実感できれば楽しい。
今、世界で起きていることを冷静に観察すると、社会主義よりはましと思えた資本主義にも限界が近付いている。
私事で恐縮だが、4年前、自宅を建てようと近くのハウジングセンターを訪ねた。家は多くの製品の寄せ集めなので、大袈裟に言えば資本主義の集大成と言える。気に入ったモデルハウスがあったので、大手ハウスメーカーと契約し、その後何回も打ち合わせを重ね、自宅プランが具現化して行った。3か月ほどで、我が家となるプランの完成CGと平面図、施工図面が出来上がった。しかし、木造2階建てのその姿は理想とかけ離れていた。張りぼてのような外観、木目を真似た合板の床、安物のユニットバス、水栓金具に至るまで理想とはかけ離れていた。現実はこんなものと諦めてプラン通りに建てる選択肢もあった。大多数の人は、これだけ議論を重ねたのだからと妥協するのだろう。しかし、私は妥協しなかった。それまでに掛かった設計費用と違約金を支払い、新たに地元の設計事務所と本当に建てたかった家を描き、2年後、ビルトインガレージのある鉄骨3階建て、床材は総ウォールナット、お洒落なお風呂、独立キッチン、水栓金具は有名海外ブランドの理想の我が家が建った。しかも、掛かった費用は、大手ハウスメーカーよりも安かった。道行く人は、「高かったでしょう」と言うが、実はそれ程でもない。その質問は相手を間違っている。同じ質問を大手ハウスメーカーで家を建てた人に対してすべきだ。毎月、あくせく働いて振り込むローンは、イメージ代と品行方正なセールスマンの人件費と割り切るしかない。心配のアフターサービスは、差はないどころか無理難題を言ってもよく面倒を見てくれる。
今、時代は大きく変わりつつある。日本の大企業が急成長した時代に家を建てた世代は、確かに最先端の建材、最新のユニットで家が建ったのかもしれない。しかし、バブル以降、デフレが長引き、大企業も赤字、リストラに苦しむようになり、派手な広告宣伝費をどこかで帳尻を合わせようとすれば、材料の原価を安くするしかない。原価低減の至上命題は、ハウスメーカー、ユニットバス、キッチン、床材、その他すべての材料に及ぶ。すべての材料にイメージ代と人件費が乗ればどうなる?
前章で触れた「原価100円で」というのは、そのような切羽詰まった状況で企業戦士が心を鬼にして言い放った。だから、それを良くないと主張するつもりはない。しかし、私は、選択肢の一つとして、イメージではなく、本物の価値にお金を払いたい人が選択できる製品があってもいいのではないかと提案している。沢山の従業員を長期雇用する経営努力は尊敬に値する。しかし、消費者は、それをありがたいと思うだろうか?性能や新技術を疎かにすれば、結果として消費者を欺くことになり、悪く捉えれば、消費者を蔑ろにして身内を守ると言われても仕方ない。
嘗て、SONY、HONDAにはワクワクさせる何かがあった。出来損ないのテープレコーダー(ウォークマン)、空冷エンジンの自動車(S600/800)etc.…たとえ壊れても、笑い飛ばせる余裕があった。
青臭い議論なのかもしれないが、最先端技術で価値に見合った性能を提供するベンチャーがまた出て来てもいいではないか。
そんな日が来るのが待ち遠しい。
平成29年05月08日
LEDピュア発売目前に思うこと