Chapter 117
近年、UV-LED分野への新規参入が増えているが、マーケットの期待とは裏腹に、昨年度は、売上、利益とも減少した。そんな事情から、弊社は、ビジネス領域をBtoBからBtoCへ拡大する。UV-LEDマーケットを自ら創造しようと決断した。
2000年に世界で初めてUV-LEDを世に送り出し、当初は「こんな弱い出力では使えない」との声に、高効率化を図り発光効率が60%以上になった。それを見込み客に持って行くと「価格がUVランプに比べて高すぎて使いものにならない」と指摘されたので、大幅な製造コスト削減に取り組み、従来の20分の1の価格を実現した。
今度こそはと、勇んで持って行ったところ、マーケット環境が悪いので変えられないという。2020年までに水銀を全廃せよという水俣条約が締結され、紫外線光源として水銀ランプが使えなくなるというルールまでできたにも関わらず、これは一体どういうことか?
省エネ、長寿命、環境汚染物質を使用せず、価格もランプに近付いたUV-LEDが採用されない理由は、寿命の短いUVランプでビジネスする産業の身勝手な事情によるとしか思えないが、ユーザーの利害を無視した姿勢は長続きしないだろう。
弊社は、単にUV-LEDの開発に留まらず、応用開発にも注力してきた。光触媒と組み合わせた空気清浄ユニットは、公的研究機関による評価で、プラズマ方式と比較して高い脱臭効果、殺菌効果が証明されている。これらの空気清浄ユニットを大手家電メーカー、自動車電装メーカーに採用を持ちかけたが、どこも回答は同じ、「原価100円以内」と。これが現実なのだ。臭い空気清浄器、エアコンでも十分売れるということだろう。
本気で脱臭・殺菌効果を発揮するユニットを作ろうとすれば、表面積の大きいハニカムセラミックス触媒坦体に光触媒(二酸化チタン)を担持し、波長365nmの紫外線を5mW/cm²以上の照度で照射しなければならない。世の中には、可視光型の光触媒なるものも存在するが、効果が大幅に低下するので実質的な効果は期待できない。従って、これらの条件を原価100円で実現することは不可能だが、その家電メーカーから照度0.05mW/cm²のUV-LEDを1個(確かに原価は100円)だけ採用したエアコンが販売された。
こんなことを書くと、何を青いこと言っているのだという人がいるかもしれない。確かに消費者はイメージを買っている。憧れのタレントがCMに出てきて、見た目が恰好よく、それらしき性能が出れば、それで顧客は満足する。原価に3000円/台掛けるより、タレント代に1000円/台かけた方が売れるのかもしれない。
弊社は、6月から空気清浄器3種類と殺菌器2種類を「LEDピュア・シリーズ」として販売する。効果を確実に発揮するために高出力UV-LEDを3個搭載し、フィルターも、光触媒フィルター1個以外に、PM2.5を取り除くHEPAフィルター1個、更に脱臭効果を高めるカーボンフィルター2個の4重構造とし、徹底的に空気浄化にこだわった。車で言えば、インタークーラー付きツインカムターボといったところか。価格は、競合製品より安く設定した。
確実な機能 vs ブランド力+イメージ効果、消費者はどちらを選ぶだろうか?
平成29年04月05日
LEDピュア 発売にあたり