Chapter 134
9月は、応用物理学会と日本学術振興会の招待講演があり、「UV-LEDはUVランプだけでなく可視光のLEDも置き換える」という趣旨の講演を行った。 深紫外LEDへの技術的関心が高い中でのピント外れなテーマなので、特に応物では、満席の聴講者の反応が希薄で、「やっちまった」と感じていたが、後日、記事で取り上げられたのを見て、そうではなかったとわかった。
講演の後半は、次世代スマートフォンのディスプレーとして開発が活発化しているマイクロLEDディスプレーをUV-LED化することのメリットに関して話した。 ご承知の通り、有機ELディスプレーは、自発光なので、鮮やかな画面を実現するが、寿命が短く、熱に弱く、色再現性が低いので、ディスプレーとしての出来がよくない。 特に、車内環境で使用できないので、無機材料ディスプレーへの関心が高まった。 また、ヘビーユーザーのアップルが、本気で開発中という噂で、開発が活発化した。
私は、18年前に、この会社を設立した当時、マネジメントメッセージに、「TV、照明、その他、光る物は全てUV-LEDに置き換わる」と書いた。 当時は、LED照明でさえ、夢物語だったので、「そんな馬鹿な」と感じた人が多かったと思うが、今なら、「そうかもね」と捉える人も多いだろう。 UV-LEDは、µ化することで効率を上げられる(特許出願中)ので、µLEDディスプレーに向いている。
そんな背景もあって、11月1日付けで新会社「マイクロ・ナイトライド」を設立する。
µLEDのチップサイズは10µm×20µmから20µm×40µm程度で、ボールペンのボールサイズφ500µmに約100チップ、スマホ画面サイズのTFT基板に200万個~300万個が実装される。 従って、従来のように、チップ良品を全数検査してソーティングすることは不可能で、全てが良品となる結晶ウエハを成長し、プロセス加工する必要がある。 また、最大の課題はコスト、ディスプレーとして5千円以下に収めなければならない。
化合物半導体であるLEDは、ナインイレブンと表現されるシリコントランジスターの繊細な作り方と比較すると、雑な作り方をしている。 それは、その程度で十分ということで、市場が要求しなかったからである。 従って、歩留まり100%のµチップを作るということはそれ程難しくない。
µディスプレーは、ただ単に、寿命と耐久性で有利ということだけでなく、フレキシブルに曲げることが可能で、更にアクティブマトリックス化することで、TFTが不要となる。 これはどういうことかと言うと、TFTの生産に必要な1000億円単位の莫大な投資が不要になり、小額投資で様々なサイズ、形状のフレキシブル・ディスプレーを実現できる。
科学技術の進歩は留まることがない。マイクロ・ナイトライドに、請うご期待!
平成30年10月30日
ナイトライド第2章