Chapter 187
熊本の半導体が凄いことになっているらしいが、結果が出るのは早くとも3年以上先なので、頭を冷やした方がいい。決して冷や水を浴びせるつもりはないが、未だ嘗て御上が経済に口出ししてうまく行った試がない。TSMCにして見れば、投資を日本国政府が肩代わりしてくれる訳だから、乗らない手はないが、日本の半導体メーカーは戦々恐々だろう。弱り目に祟り目だ。わかり易く言えば、ウクライナに攻め込むロシアに、ウクライナ政府が武器と弾薬を供給するような禁じ手(異常と思える)だ。私の独断だが、3年後、TSMCの世代の古い半導体工場がフル稼働するとは思えない。生き馬の目を抜くと言われる程、半導体ビジネスは競争が激しい。車の工場を作るのとは訳が違う。米国は、日本車メーカーの米国誘致で成功したから、今回も同じやり方でうまく行くと考えたのかもしれない。車は、サイズで価格が決まるが、半導体は性能で決まる。従って、旧世代の半導体は、価格競争に巻き込まれる。米国、日本のTSMC工場で作った半導体が、世界のマーケットで、ルネサスといった従来の半導体メーカーの製品と厳しい価格競争になる。中国も、自国半導体製造を進めているので、競争は更に熾烈になるだろう。TSMCは補助金で助けられているので、国内半導体メーカーは、圧倒的不利になる。そもそも、EV化の流れの中で、パワー半導体ならわかるが、従来のシリコン半導体の需要が期待できるか?こんな馬鹿げたこと、少し考えればわかる。たとえ、熊本が栄えても、従来の半導体メーカーの城下町はどうなる?そして、採算が合わなくなった過剰設備と人員の売り先を探すことになる。アップルへの部品サプライヤーでも、同じような話をよく聞く。大量に発注するという口車に乗って投資をした途端に、サプライヤー切り替えとなって、The END。
このところの半導体不足デマ?の影響で、世界中が冷静さを失っているように見える。以前、私が指摘した通り、半導体不足など、本当にあったのだろうか?単に、価格が安く、作り手がいなくなった、ありふれた部品が欠品になっただけなのではないか?中国からは、相変わらず、多くの部品、製品が従来通り輸入されている。
但し、潮目が変わる可能性が全くない訳ではない。そのきっかけは、中国と米国の開戦。 中国が台湾に侵攻すれば、米国軍を派遣するとバイデン大統領が明言しているのは恐ろしいことだが、戦争を予告しているように受け取れる。もしそうだとすれば、中国からの半導体、部品の供給は止まるので、工場誘致は大当たりとなる。従って、あってはならないことだが、米国は、自国経済優先のために、米中開戦に踏み切る可能性がないとは言い切れない。
中国の人権侵害問題程度では、製品の全面的輸入制限には弱いので、台湾侵攻が必須だろう。しかし、既に中国にある米国をはじめとする自由主義陣営企業の工場は放棄することになるので、議論が二分するだろう。可能性は、低いが、衣服、おもちゃから、最先端の半導体に至るサプライチェーンを自由主義陣営に取り戻すという意味では、有り得ない話でもない気がする。そうなれば、あらゆる産業で、設備投資が必要になる。
熊本へのTSMC誘致が吉と出るか、凶と出るか、目が離せない。
-令和4年10月11日
盛り上がる熊本半導体