Chapter 50
このストーリーもお陰様で50章を迎えた。11回で終了するという冗談(連邦倒産法Chapter11)もあったが、冗談とも取れない状況だったので、10年間もの長きにわたり懲りずに読んで下さった読者の皆様に御礼申し上げたい。
そこで、50回という節目にあたって勝つための条件について考えてみたい。
W杯サッカー南アフリカ大会では、スペインが勝利した。勝因としては、戦術から選手起用の的確さ等いろいろ挙げられるが、頂上決選で決め手になったのはフェアプレーではないだろうか。どちらの選手も能力、モチベーションにはほとんど差がなかった。しかし、オランダの選手は勝ちたいという意識が強く出すぎたため、それが反則となった。スペインの選手の方が小柄でスピードでは勝るため、反則で止めざるを得なかったとも言えるが、華麗にパスを回しわくわくするプレーで見る者を楽しませた。審判がスペインに有利とも思えるジャッジをしたのも、全体的にオランダの卑劣なプレーが目についたからではないか。このように審判、観客を味方につけるということは大変重要である。
おもしろいもので、人は罪悪感があると無意識のうちに決められる筈のシュートを外す。従って、私は、勝つために最も重要なことはフェアプレーだと思った。スペインの選手は、かなり厳しいタックルに会いながらも、それに苛立つことなくフェアにプレーした。たとえ結果が負けだったとしても、勝つ以上のものを得ただろう。選手生命は短いが、伝説として語り継がれるようなまばゆい輝きを放つ瞬間がある。競技本来の目的は勝つことなのだが、勝つよりも重要なものが存在する。それは人間としての尊厳である。
ちょうど時を同じくして参議院選挙で民主党が惨敗した。低レベル過ぎて、敢えてコメントするまでもないが、嘘つきは泥棒の始まりということだろう。
以前にも、指摘した通り、誤魔化しの利かない企業やスポーツでは、世界に通用するプレーヤーが沢山いるが、政治、行政の立ち遅れが景気後退とともに顕著になってきた。ただ、これらの問題点が浮き彫りになるのは良いことだ。岡田ジャパンも、追い込まれて生まれ変わった。スペインも厳しい試合を勝ち上がって優勝した。これからに期待したい。
勝つためには、まず、負けることが重要だ。1次予選では盤石に見えたブラジルは、予期せぬオウンゴールで脆くも崩れ去った。同じく順調に勝ち進んだマラドーナ率いるアルゼンチンも、天才メッシがノーゴールで大敗を喫した。これらのチームは順調過ぎたため、逆境に耐える精神力が養われなかった。
以前、理論に頼り過ぎると勝てないということを述べたが、成功した経営者は全て同じことを言う。成功を信じて一歩一歩前へ進むこと以外勝つ方法はない。そもそも勝つことを目的にすると勝てない。目的は、あくまでも自分たちの目指す社会、製品、スポーツを実現することであり、競合など関係ない。
これからの日本のあり方は、最小の政府で最大のサービスを目指したらいい。一般的には小さな政府イコールサービスの低下だが、そうではなく、行政の無駄をなくすことで、国民への最大のサービスが可能になる。具体的には、これから2年間消費税をなくし、2年後10%に上げる。この2年間で、行政システムを電子化し、確定申告と同様に自宅からパソコンやケータイで、住民票や戸籍の届け出から選挙の投票まで、すべてのサービスを電子化し、小さな政府を実現する。2年間消費税がなくなって消費は上向きになり、企業は潤う。仕事がなくなった公務員は、本人の希望を反映して、民間企業が売上規模に応じて引き取る。このようにすれば、民間企業は、優秀な人材をリクルートせずに採用でき、一挙両得となる。
以前JALの記述で述べた通り、優秀な従業員の能力を引き出せるかどうかは、トップまたは上司の能力次第であり、幸い日本の行政機関にはやる気のある優秀な労働力が溢れている。今の行政システムの評価尺度では日の目を見なかった不幸な人々が能力を開花できる可能性もある。これらの埋もれた人材を民間で有効活用すれば、日本はもっとよくなる。
私は、日本の政治家、役人が無能だと言っているのではない。折角の能力が生かせないシステムに問題があると思う。年功序列、他人より目立ってはいけないといったような環境から彼らを解放し、伸び伸びとプレーできる環境を提供する。
従って、経済を活性化するために、訳のわからないバラマキはいらない。ただ単に価値観とシステムを変更するだけで、この苦境を脱することができる。
このシステム変更には、痛みが伴うかもしれないが、それをガタガタ言ってはいけない。真面目に働く気のない人達まで、同じ船に乗せる訳には行かない。乗る資格があるのは、真剣に働く気がある人だけだ。その厳しい道程を乗り越えたところには、日本が世界に誇れる理想的な社会システムが実現する。これこそが勝つためのシステムと言ってよい。
平成22年7月16日
50章を記念して日本が世界に勝つために