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ナイトライド・ストーリー

Chapter 69

ロンドン五輪での日本の活躍は期待していなかった分期待以上だった。「今時の若者は」という嘆き節は紀元前エジプトのピラミッドにも記されているが、当分この嘆き節を聞かずに済むかもしれない。選手強化費を増やした効果もあるらしいが、個人の努力あっての話であり、沢山の勇気と感動をもらった。また、メダル当然と思われた選手の苦戦を観て、頂点に立つことの難しさと価値を確認した。

ジェームズ・C・コリンズ著ビジョナリーカンパニー2に、「勝った選手にはコーチが付いていた。しかし、敗北した選手にもコーチが付いていた」という記述があるが、コーチが付いていない選手は五輪には出場できないということは確かだ。コーチのアドバイスに従って勝った者、従ったにも関わらず負けた者、勝負は時の運であり、本質を徹底的に分析することが重要だ。


さて、弊社を取り巻く環境も、五輪アスリートと同様、昨年からNEDOの支援により新技術の開発を行っているが、今期は更に経済産業省の補助で先端技術実証を行う。我々はUV-LEDで世界の頂点を目指すことを期待されている。

日本のエレクトロニクス産業、特に「お家芸」のTVが、苦戦を強いられている。頂点を維持することの難しさは五輪で確認済だが、盛者必衰の理を現している。私が2010年シアトルのSID(Society for Information Display)で講演をした際、発表者、参加者のどちらも、韓国、台湾の研究者が圧倒的に多かった。日本企業は、この分野の先端技術開発に力を入れていないことを感じさせた。

五輪サッカー男子の試合でも感じたが、初戦で日本がスペインを撃破したように、過去の強豪は今の強豪ではない。スペインはソブリンリスクの影響もあるかもしれないが、日本サッカーは国民の関心も高く上昇基調にある。スポーツに限らずビジネスにも波がある。失っていいものと守るべきものは明確にしておく必要がある。


今、政治、経済、その他、不愉快なことが多いと感じるが、インターネット、SNSによる情報革命に起因する膨大な情報が瞬時に手に入るようになり、社会システムが追い付かなくなっている。

この変化は幸いなことによい方向に向かっている。変わることに対する戸惑いはあるが、変化を恐れてはいけない。

私は、日本の行政も企業も確実に変わりつつあると感じている。それは、先に触れた開発補助金もそうだが、従来、弊社のようなベンチャー企業が国から支援を受けることは難しく、大企業が優先された。

また、お役所以上にお役所的と揶揄される電力会社も変化している。弊社の電気容量増加に対応して、従来なら半年以上かかるところを、たった2か月で新たな配電線を敷設して対応した。


日本は震災という重い十字架を背負ったが、この十字架の重み分、更に強くなれると思う。五輪でも多くのアスリートが被災地への思いを胸に戦った。

日本は、少数精鋭の国家を目指せばいい。優秀なアスリートが海外のチームで活躍し、オリンピックとワールドカップの時だけ、日ノ丸を背負って戦うのと同様、個人も、海外で働き、盆暮正月だけ日本人を実感する。

今後、工場の海外移転に続いて、管理部門も海外に移転する。その時に日本人であることは、何ら意味を持たない。アスリート同様に実力で評価されることになる。

このように考えると、国の役割も変わる。海外で働く国民が、働きやすい環境を整備することが重要になって来る。

ユーロ危機は、国という単位を超えた新たな枠組みを形成することの難しさを浮き彫りにしたが、方向性は正しい。国境は意味を持たないものになりつつある。国境は心の中にあるべきもので、線を引いて奪い合うものではない。

五輪というイベントを通じて、国と企業、そして個人のあるべき姿を考えてみたい。


平成24年08月17日

ロンドン五輪を観て感じたこと

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