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ナイトライド・ストーリー

Chapter 80

日本の株価が上昇し、企業の好決算が目立つようになってきたのは大変よい。以前指摘した猫も杓子もコピースマホから、独自性のある製品開発へシフトしたことが好決算のベースにある。どんなに優れた企業も、勝ち続けると安易に流れるが、崖っ縁に追い込まれれば火事場の馬鹿力が出る。

5期連続増収増益と好調を維持してきた弊社も、アジア勢のUV-LEDへの本格参入によって事情が変って来た。LEDは半導体なので、量産効果によって価格が下がる。従って、大量に注文を取った企業が有利になる。UV-LEDは、まだマーケットサイズが小さいので、弊社のようなベンチャー企業でも何とかなったが、今後急速にコモディティ化が進行する。前章でご紹介した韓国企業との提携はその先手を打った格好だ。これが後手に回っていたら来年には会社がなくなっていた可能性すらある。提携に関しては否定的な意見もあったが、私は提携に大きなチャンスを見出した。今だからこそまだ世界初のUV-LEDメーカーというブランド力が通用するが、半年後にはそのブランド価値が失われている可能性が高い。ブランド価値は、製品力あってこそである。高性能且つ高価格は長続きしない。高性能且つ低価格がマーケットの勝者になることは明らかだった。そして、我々が組んだソウル半導体グループは、弊社のUV技術に創業の早い段階から敬意を示し、AC-LED、UV-RGB白色LEDといった従来にない新しい技術を生み出して来たパートナーである。また、LED関連特許を1万件以上保有する稀に見る技術志向の企業なので、特許を独占的に無償解放してでも提携を強化する価値は十二分にあると判断した。そして、その狙いはずばり的中した。すなわち弊社が苦手とする365nmのハイパワー製品から405nmに至る長い波長領域で、弊社の製品ラインナップの穴を埋めるだけでなく、大幅な低コスト化も可能にした。

高性能で安価ならば負ける理由はない。この提携によって劣勢に廻っていた市場で反転攻勢に出て、世界初のUV-LEDメーカーというタイトルを世界一のUV-LEDメーカーに塗りかえるチャンスを得た。正にピンチはチャンスと言える。 過去10年間で、多くの台湾、韓国のLEDベンチャーが経営に行き詰まる姿を見て、状況判断を誤る怖さを理解している。企業を経営する上で最も重要な能力は、先を予測する能力と状況判断力、そして実行力だと思う。当然のことながら単なる楽観は駄目であり、悲観的楽観でなければならない。つまり、現状を悲観的に見て、楽観的に将来あるべき姿を予測し、その姿に近付けるために何をすべきかを考え、実行する能力だ。

なぜ折角作り上げた技術を、無償解放するのかという意見もある。そういう発想をする人は、ビジネスセンスを持ち合わせていない。失うものが大きければ大きいほど得るものも大きくなる。

平成25年11月07日

一寸先に備える

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