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ナイトライド・ニュース

「2009/6/11 勝つ-中小企業のものがたり- ナイトライド・セミコンダクター3(日刊工業新聞)

ナイトライド・セミコンダクター3 勝つ 中小企業のものがたりコストとの狭間
事件は会社が軌道に乗りつつあった02-03年に起きた。20人いた社員のうち半分の10人が社を去ったのだ。社長の村本宜彦は、紫外線(UV)-発光ダイオード(LED)を開発するナイトライド・セミコンダクターにあって、“技術屋”ではない。これが研究員との間にあつれきを生んだ。
徳島ニュービジネス協議会の初期運営にほぼ一人で携わった経験を持つ村本は、同社でも強烈なリーダーシップを発揮していた。
一方、社員の大半は大学から移籍してきた研究者。研究優先で経営、コスト面への関心は薄かった。「多額の投資をしてくれた株主を納得させなければならない」と一切の妥協を許さない村本と対立し、10人が退職していった。
ただ「意見は合わなかったが、彼らは技術を残してくれた。」ここで手応えをつかんだUV-LEDの開発の手を休めるわけにはいかない。細く長くやるしかないと村本は腹をくくった。
世界中から問い合わせ

まず波長350ナノメートル
UV-LEDで偽札検知UV-LEDは青色LEDより波長が約100ナノメートル(ナノは10億分の1)短く、人の目には見えないが、RGBの蛍光体に当てるとすべての色を出すことができる。可視光LEDがただ光るだけなのに対し、UV-LEDは蛍光体、樹脂、光触媒などに働きかけて物質を変化させるエネルギーを持った光を発する特徴がある。
RGBの蛍光体に当てるとすべての色を出すことができるUV-LED 01年、まず波長350ナノメートルのUV-LEDを開発した。その後も375、370、365ナノメートルの波長の製品を次々に開発、製品の幅を広げた。紙幣識別機などのセンサー用光源や樹脂硬化装置、光触媒と合わせた空気清浄機向けなどの量産体制を整えている。
「世界中から問い合わせがあった」。紙幣識別用はユーロや人民元、ドルなどの紙幣の現金自動預払機(ATM)向けに引き合いが殺到した。応用製品の開発も収益力向上につながった。例えば紙幣識別用ではUV-LEDチップだけでなく、偽札検知センサーと組み合わせたユニット製品を販売した。空気清浄機では光触媒と組み合わせた。照射部門でもUV照射ユニットとして提案した。医療やバイオ関連でも応用製品を拡販している。
死の谷越え
ただ応用製品を発売するまでに試作を繰り返し、04年から3年を要した。その3年間は、特許を海外企業に売却するなどしてしのいだ。「どう食いつなぐか。まさに“死の谷”だった。そこで息途絶えるか、大企業に買収されるか」。村本は徹底的な経費削減に着手した。これまで応募することのなかった補助金も申請した。四国経済産業局から、地域新規産業創造技術開発費補助事業で認可を得た。
「電子部品の新製品は、性能が従来品より優れていなければならない。その上、コストを下げる必要がある」。村本はあらためてコスト面での優位性がビジネス化成功の岐路となることを学んだ。コストの森を懸命に駆け抜け、09年3月期に大幅黒字を達成した。(敬称略)

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