ナイトライド・ニュース
「世界一」の冠を持つLED(発光ダイオード)メーカーは、徳島県内で日亜化学工業(阿南市)のほかにもう1社ある。鳴門市瀬戸町に本社・工場を構える紫外線LED製造・販売のナイトライド・セミコンダクター。波長の短い紫外線LEDの開発に初めて成功しただけでなく、製品の性能面でも先頭に立つ。
ナイトライドは2008年8月、光波長375ナノメートル(ナノは10億分の1)の砲弾型LEDの新製品を発表した。出力は最大26ミリワット。既存製品の約2倍となる世界一の高出力を実現し、幅広い用途への道を開いた。
多種多様なLEDが世に出ているが、ナイトライドは紫外線LEDの製造・販売に特化している。一本やりの理由は紫外線LEDの応用範囲の広さにある。
ナイトライドは産学協同ベンチャーとして2000年4月に設立。当初は徳島大学が開発した窒化ガリウム基板の事業化を目指していた。しかし事業は軌道に乗らず、1年余りで暗礁に乗り上げる。
「総額14億円もを提供してくれた投資者に申し訳が立たない」(村本社長)。起業早々、路頭に迷う。一里塚となったのは「波長の短いLEDならできるかも」という技術者の一言だった。
02年5月に初めて市場投入した紫外線LEDは、出力が高いものでも1ミリワット程度。以後、毎年着実に製品の出力レベルを上げ、同時に品質を高めてきた。結晶構造の改善や基板処理の改良…。性能向上を支えているのは、阿南高専の卒業生を中心とした技術者たちだ。起業時に高額報酬で他社から招いた5人の技術者は今はもういない。
「現在いる技術者は半導体に関してみんな素人だった。挑戦する前に結論を考えなかったのが奏功した。『無知』が武器となった」。村本社長の実感だ。
ナイトライドの売上高は現在、4分の1を海外販売が占める。欧米の大手装置メーカーは、半導体を専門とするインターネットの通販サイトから単品を購入、試験し、その後商社を介して大量発注を寄せてきた。
村本社長の想定外の利用も表れた。ネイルアートでつめに塗ったジェルを硬化させる小型機器。メーカーの営業工夫や不況が追い風となり、「自宅用」として需要が伸びるヒット商品になった。
「出荷しても何に使われているか、実のところ分からない部分は多い。だが用途は確実に広がっている」(村本社長)。 ナイトライドは市場規模の巨大な照明分野への進出も視野に含める。紫外線LEDを使った白色光は、青色LEDベースに比べて「天然色」だとされる。コストの課題克服に注力し、商品化への準備を整えている。
「うちのようなベンチャーの製品は、大企業の倍以上のクオリティーでないと信頼を得られない。それに見合う努力を怠れない」と村本社長。
製造工程の一部は国内外の協力工場に託すものの、結晶化など中核部分は自社の技術を注ぐ。従業員は10人。少数の部隊で新たな世界一を目指し続けている。