超高出力UV-LED開発
コストを10分の1に低減
ナイトライド・セミコンダクター(株)(徳島県鳴門市瀬戸町明神字板屋島115-7、TEL088-683-7750)は、紫外線発光ダイオード(UV-LED)のリーディングカンパニー。3月には超高出力のUV-LEDを新たに開発し、海外勢の攻勢が強まる同分野において、トップメーカーとしての地位をさらに強固なものにしている。
代表取締役の村本宜彦氏に話を伺った。
―――業績動向について。
村本
2012年度は上期を中心に需要が堅調に推移し、前年に比べ2桁成長を記録。結果5期連続の増収増益を達成することができた。用途別では、全体の約7割を占める紙幣識別機向けが、新興国でのATM需要の増加を受け好調であった。そのほか、電子部品やネイルなどに使用される樹脂硬化用途や、UV硬化用途、光触媒による空気清浄機向けも堅調であった。また、新規分野としてバイオ・医療関連分野での市場化も着実に進行している。
―――新製品の詳細を。
村本
超高出力のUV-LEDを開発し、チップサイズ1.5mm角の製品のサンプル出荷を開始している。一般的な1mm角のチップより面積比で倍以上になりEQE(電気を光に変換する効率)も35%と世界最高レベルを実現した。さらに2.2mm角という業界最大クラスのサンプルは、予定より遅れているが、近いうちに提供する。これらの超高出力製品はVチップ(上下電極)構造を採用し、結晶成長基板として使用するサファイアを取り除く必要があるため工程数が増え、レーザー加工の高い精度が要求されるため歩留まりが低く、コスト高という問題があった。しかし当社は独自の基板技術を用いて、これらの問題を解決し、製造コストを従来の10分の1にすることに成功した。今後はVチップ製品を当社の中核製品にしていく。
―――設備面について。
村本
12年度下期に設備投資によって生産能力を増強した。製造キャパシティは従来の10倍以上になり、さらなるコストダウンも可能になった。
―――13年の方向性は。
村本
新製品の拡販を中心に用途の拡大も進め、6期連続の増収増益を目指す。また当社では、紫外線LEDで赤、緑、青の3色の蛍光体を励起し、白色を再現するRGB方式の白色LEDを以前開発したが、リーマンショックでコスト意識が高まってユーザーの関心が薄れた。最近はコストよりも性能が重視されるようになりつつあり、今年度から同用途向けUV-LEDチップの開発を再開した。
―――UV-LEDの市場について。
村本
近年、この分野の急成長を予測するレポートが発表された影響もあって、台湾・韓国メーカーなどの新規参入が相次いでいる。今のところ品質と効率は低いが、低価格なのが強みだ。客先からこれらの価格を引き合いに納入単価を下げるよう要請される事例が増えているが、今後は特許侵害にも注意していかなければならない。これら新規参入に対抗するうえで、当社としては高効率化技術の開発をさらに推し進め、性能面での差をさらに広げていく。EQEも50%以上まで引き上げ、海外製品と比べ2倍の効率を有しながらコストは同等といった製品を開発していきたいと考えている。今後、UV-RGB方式白色LEDをビジネス化していくうえにおいても、このような取り組みが必要不可欠になる。技術的ハードルは高いが、アベノミクスの恩恵で研究開発に対する国からの支援が強化されており、思い切った研究開発で圧倒的優位に持っていく方針だ。