Chapter 137
年明けの金融市場の混乱は収まりつつあるが、英国の合意なき離脱の可能性等、予断を許さない状況には変わりない。 LGBTや同性愛といった多様化の流れの中で、偏屈な英国人が、合意なきEU離脱を選択することに、意外性はない。
昨年、封切りの英国ロックバンドQUEENを描いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットしているが、私は、デビューからの大ファンなので、見たいと思う反面、ヒットすればする程、ミーハーと思われるのが癪なので、見たくないという偏屈が頭を擡げてくる。 実際に、世界的にヒットした「JAZZ」以降、アルバムを買っていない。 そもそも、デビュー当時のクイーンの音楽自体が、エキセントリックな者にしか受け入れらない偏屈ロックだった。 特に、コアなファンの間で最高傑作とされる二作目「QUEENⅡ」は、英語の歌詞が理解できない日本人には、メロディアスな楽曲が受けて、本人たちが驚く程の人気となったが、英語圏では、意味不明とこき下ろされ、それ程でもないモット・ザ・フープルの前座だった。 マーケティング的にも品行方正な学位を取得したインテリがヒラヒラした衣装で演奏するロックなんてヒットする筈がないと思われた。 しかし、3作目の「キラー・クイーン」が、スマッシュヒットとなり、4作目のオペラ座の夜に名曲「ボヘミアン・ラプソディ」は、収録されている。 この時点では、大してヒットしなかった。 その理由は曲が長過ぎた事。 5分55秒の長い作品は、3部構成で、オペラの影響が強く、「ロックにオペラはちょっとね」と感じたファンも多かった。 (特にコアなファンはハードを期待した)
この曲は、フレディがバイセクシュアルであることをカミングアウトした曲とされるが、4オクターブの声域を持つフレディの当時のスタイルは、高音で歌うレッド・ツェッペリンのロバート=プラントに近く、曲の編成も「天国への階段」と似ていた。 最も有名な曲「ウィー・ウイル・ロック・ユー」は、米国野球メジャー・リーグのジングルとして、未だに使用される。 たった2分2秒という短い楽曲が、プレーの合間に挿入するのに適していたことと、同じアルバム「世界に捧ぐ」で次に収録されている「ウィー・アー・ザ・チャンピオン」を想起させることが、長命の理由だろう。
こうやって見てくると、東アフリカのザンジバル革命を逃れたインド系移民、フレディの成功ストーリーを描いた映画が、このタイミングで製作されたのは、単なる娯楽映画としてではなく、ブレグジットに対する無言の抵抗の意味合いがあるのではと勘繰りたくなる。 ビートルズのメンバー、エルトン=ジョン、エリック=クラプトン等、白人成功者に続いて、移民としての成功者フレディも、高い税金を逃れて、米国に移り住んだ。 今度は、サッチャー首相時代に、ウインブルドン現象と批判されながらも経済優先のために、誘致した金融業、製造拠点を自ら放棄する。
英国民は、果たしてブレグジットから何を得るのか? マーケティング的には、全く見込みがなかったクイーンが40年以上に亘って成功を収めた理由と同様、ブレグジットの先にあるものは、常識を超えた判断なのかもしれない。
平成31年02月07日
ボヘミアン・ラプソディに思うこと