Chapter 163
やっと出た緊急事態宣言の効果で、感染者数の増加は一服した感はあるが、特措法、感染症法の罰則規定と聞いて、初めは腹が立ったが、あれこれ想像するうちに思わず笑ってしまった。 笑った理由は、チャップリンの喜劇映画を思い出したからだ。 コロナ禍で鬱にならないよう、「ガースー」に続いて笑いを提供しようということでもなさそうだが、チャップリンなら喜びそうなネタが満載といった感じだ。 1年以上経過して、未だに病院の受け入れ態勢は不十分なまま、自宅待機の患者さんのフォローや、これらの患者さんから更に感染を拡大させないための対処方法が明確にされない。 十分な議論や検討がなされず、夜の街が一方的に悪者扱いされ、自粛をお願いしておきながら、財政的支援も不十分な中で、罰則が先に規定されるのは如何なものか? そんな事を決めてしまえば、警察だって取り締まらない訳には行かなくなり、拘留施設が飲食店の拘束者で満杯、クラスターに成り兼ねない。 また、感染者が言うことを聞かない場合、どの程度で犯罪となるかの疑問。 単に入院を拒否して、自宅に帰った患者を警察官が手錠を掛けて逮捕するのか? いずれにせよ、これら感染犯罪者のために治療が受けられる拘留施設が必要になる。 穿った見方をすれば、感染して受け入れ先の病院が見つからないよりも、暴れて警察に拘束されてコロナ対応の拘留施設(多分、指定病院)に入った方が、国が面倒を見てくれるから安心という輩が出てきそうだ。 年末年始、宿と三食にありつけることを狙って軽い犯罪で捕まる常習犯の発想だ。 現実的には、そんな施設を構える余裕はない筈だから、警察官が一般患者と同じ病院で、手錠をしたまま診察を受けることになる。 そんなことに付き合わされる警察官も濃厚接触者になり、制服の上に防護服、その他感染防止グッズに身を固めなければならない。 そもそも、そんなご奉仕は誰でも嫌だし、もっと重大な犯罪が手薄になるリスクもある。 第二次世界大戦中のユダヤ人迫害と同じで、自宅待機を命じられた患者が、こっそり抜け出して遊びに行かないように、自警団が近所を監視することになるかもしれない。 そんなことをチャップリンになったつもりで皮肉っぽく想像して、笑ってしまった。 ただ実際には、これは笑い事ではなく、国が法律で罰則を規定するということは恐ろしい。 社会問題となったあおり運転でも、重罰化には時間が掛かった。 少し考えただけで、これだけの準備と労力が必要になることを、こんな拙速に決めて大丈夫か? 罰則よりも先に議論、決議すべきことは山ほどある。 いきなりマスク、いきなり休校、いきなりGoto、いきなり罰則と、フランチャイズ店でもあるまいし、場当たりと批判されても仕方ない。 これは、個々の政治家の問題というよりも政治、行政、選挙制度、支援団体、献金を含めた統治システムの欠陥と捉えた方がよい。 ITのデジタル・トランスフォーメーションよりもガバナンス・トランスフォーメーションが先だ。 こんなご時世に、議員先生方が銀座で夜遊びと聞けば、子供でも、もうこの国は信用できないと感じている。 多数決のルールを守れなかったトランプ大統領と、程度の差こそあれ同じ。 罰則規定の適用第一号は国会の先生なんてことにならないようにして欲しい。
令和03年01月27日
大真面目な喜劇