Chapter 171
驕る民主主義は、都議選の結果を見るまで方向修正されなかった。平和の祭典五輪が政治と金儲けの道具になっている現実が見え過ぎて、嫌な世の中になった。何事も綺麗ごとでは済まされないが、露骨過ぎる。本当に無観客しか方法がなかったのだろうか?私は、延期を決めた1年前に英知を結集すれば有観客で開催できたと思うので残念だ。ハリウッドのSF映画では、科学者が招集され、封じ込めるためのありとあらゆる方策が検討されるが、実際に招集されたのは、感染症を罹った患者を治療するお医者さん達であり、感染予防の専門家ではない。感染予防という観点ならば、ワクチン、治療薬は当然として、オゾン、紫外線といったウイルスに効果のある分野の専門家を招集して、空港、港湾、公共施設等で感染拡大を防ぐ手段を検討すべきだった。ただ、実際には、単に政府が勝手な思惑で進める対策を正当化するためのお飾りとして、専門家っぽく見える人たちが集められて利用された。1997年制作の原作カール・セーガン、主演ジョディ・フォスターのSF映画「コンタクト」では、北海道に予備的に設置された施設が、宇宙の先進生命体との接触をもたらす設定で、日本人の神秘性が科学技術力の高さと併せて表現された。しかし20年以上経過した今観ると、違和感しかない。カッティングエッジの日本はどこへ行ってしまったのか?深紫外線LEDを有効に活用すれば、病院、空港、飲食店、公共施設等で感染予防に行われているアルコールによるふき取りの労力とアルコール使用料を減らすことができるだけでなく、そのような場所での感染率も下げることができた。導入コスト的にも、労力(人件費)とアルコールの値段よりはるかに安価に対処できた筈。しかし、1年前に、私が無償提供を申し出て、声を荒げて警鐘を鳴らした甲斐もなく、五輪の開幕を迎える。光(深紫外線)によるウイルスの不活化は、1世紀以上の長い歴史があり、ウイルスや細菌毎に、従来の紫外線光源UVランプを使用して、どれだけの時間照射すれば、不活化、殺菌できるかという膨大なデータの蓄積がある。従って、新型コロナウイルスに関しても、エンベロープタイプのコロナウイルスの不活化方法は、感染が拡がる前から経験的にわかっていた。それにも関わらず、なぜ、有効な感染予防策が取られなかったのか、私は疑問に感じている。光エネルギーJジュールは、光照度W×時間Sで表すことができる。深紫外線LEDは、従来のUVランプに代わる殺菌用の光源であり、ランプが内部に環境汚染物質の水銀を含み、寿命が短い、制御が面倒といった欠点があるのに対し、深紫外線LEDは、これらの欠点をすべて解消した日本初の最先端技術。この技術をコロナ禍の東京五輪で感染予防に活用して世界中の来場者が安全に來日して観戦できるようなシステムを構築すれば、日本の科学技術力、先端半導体技術を世界にアピールするよい機会になった筈。ロシアのプーチン大統領がモスクワ空港で、紫外線のトンネルのようなところを潜って出てくる映像を見たが、あの装置は、コロナ対策として技術力を誇示するために設置されたと推測できる。大統領自身が技術のお披露目役を担っている。1年間の猶予があったにも関わらず、対策を何も打てなかったのは残念でならない。将来に向けて、我々は、この苦い経験を生かして行かなければならない。
令和3年7月9日
ウイルスと戦わずして敗北