Chapter 61
震災から4カ月も経過したというのに、最近の政権の混乱は目に余る。民主党内のゴタゴタだけでも嫌気が差していたところに、辞めた後まで勘違いし続けた大臣、政権内で意見がばらばらというのは一体どういうことか。こんな思いつきで政治をやられたのでは、国民もたまらない。スポーツのチームにしても、一致団結しなければ勝てないという話は、サッカーのワールドカップ、野球のワールド・ベースボール等、機会あるごとに触れた。たかだか10名前後のスポーツチームでそうなのだから、国ならいわんやおやだ。
監督はリーダーとして、自分の考える理想的な戦い方を想定し、そのために必要な選手を選定する。そして、選手に自らの描く理想的な戦い方を理解させる。選手がどのように振る舞うかは、ポジションに応じて選手に考えさせる。選手がわからない場合は指示し、間違ったプレーをすれば修正する。サッカーW杯岡田ジャパンがベスト4を目指すと言った時、大多数のファンはしらけた。当時の日本の実力ではベスト8がせいぜいと思われたからだ。目標設定さえまともにできない監督は無能だ。それと同様、子供手当、高速道路無料等、民主党のマニフェストに国民の大多数がしらけた。しかし、自民党を見放した国民は、藁をも掴む心境だった。そして、またしても裏切られた。
現政権では、選手が勝手に暴走し、試合に負けると、監督が悪びれる様子もなく、あの選手が暴走したから負けた。負けたのは私の責任ではないと言っているようなものだ。どこかの草サッカーチームよりも哀れな状況にある。歴史的にも名君は、自らの発言、一挙手一投足に重みがあり、部下の責任は自らの責任として、潔く責めを受けた。このような無責任振りは、経団連の米倉会長の指摘通り、子供の教育上よくない。
その姿は、私がこの会社を起ち上げたばかりの頃に似ている。従業員の心を掴めず、「社長辞めろ」と吊るし上げを食っていた頃とダブって思い出される。高々20名程の従業員をまとめることでさえ、た易いことではない。若い社員たちにとっては、自分の将来が社長に掛かっているのだから必死だ。当時は、私も未熟だった。技術の事は皆目わからない。新しい製品だから、売り方も行き当りばったり。上場準備の管理部門も、証券会社、監査法人任せ。結局、自分自身が、会社をどのような方向に導いて行けばよいのかというビジョンを示せなかった。今なら、自分自身にリーダーとして重大な欠陥があったことを理解できるが、当時はわからなかった。小泉政権以降の短命政権に共通するのは、リーダーシップの欠如だ。
また、米国の共和党レーガン政権の「強い米国」、民主党クリントン政権の「規制緩和」、共和党ブッシュ政権の「対テロ戦争」といったように、政党によって方向性は異なるが経済界との協調性が見て取れる。一方、低所得者層救済色の強いオバマ政権は、経済界との接点が見えない。
長続きした政権と続かなかった政権の違いは何か?それは、各政策の落としどころをあらかじめ想定できているかどうかだ。美しい理想を語るのは簡単だが、それを実現するのは難しい。有能な政治家は、あらかじめ落とし所を想定してから物を言う。空手形を切ることは政治家にとって命取りとなり、小さな理想を確実に履行することが重要だ。
私は、現実を冷静に見極め、理想と現実のギャップを埋めるのがリーダーの役割だと思う。民主党は、事業仕訳のように議論をオープンにすることで国民の理解を得、落とし所を得た。ところが、今は落とし所のない個人的理想ばかりを述べ、混乱を引き起こす状況に陥っている。
こんな不甲斐ない大人の姿を見せられる子供たちがかわいそうだ。残された期間で、岡田ジャパン同様、捨て身の溌剌とした全力プレーで感動させて欲しい。
平成23年7月11日
あまりにも酷い政治の有様について