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ナイトライド・ストーリー

Chapter 82

このところ大企業の決算が大幅に改善し、過去最高決算という見出しが新聞でも目につくようになった。これは大変結構なことだが、諸手を挙げて喜べない事態でもある。

それはどういうことかと言えば、決算の中身をよく見ればわかる。売上は前期横ばい若しくは減少にも関わらず利益だけ伸びている。つまりは、リストラによって業績が改善したに過ぎない。工場の海外移転、閉鎖、従業員のリストラ、下請けへの無理な価格要求によって収益が改善したというのが実体だ。

安倍内閣の賃金ベースアップという政策はそのような実情を反映したものだと考えるが、リストラされた従業員にベースアップはない。だからと言って、私は大企業を非難しているのではない。大企業といえども赤字を出し続けることはできない。従って、リストラ已むなしという結論に達する。


幣社の今期決算は、過去の5期連続増収増益から一転、減収減益は愚か最終赤字に転落する見込みだ。その原因は競争の激化だ。UV-LEDに韓国、台湾、そして中国の企業が参入し、これらの参入企業の思惑に反してマーケットの拡大スピードが遅い。市場レポートがUV-LEDの未来をバラ色に予測するのに反して実体はほとんど伸びていないどころか縮小している印象さえある。

プレーヤーは多くなったのに、フィールドが相変わらず狭いのだ。弊社は、これら参入企業及び競合企業に対抗して値下げを行ったが、パイが増えないので、売上と利益が減少する結果になった。

また、バラ色の市場予測に基づいて大幅な設備投資を行ったが、これが更に収益を圧迫することになった。

前章でも触れたが、我々はこの状況を打開するために改革を実行しつつある。つまり、単にUV-LEDの製品単体を提供するに留まらず、UV-LED光源を顧客の求める最適な光源として提供するメーカーに生まれ変わろうとしている。

創業時から大切にしている理念は、やる前からやらない結論を出さないということ。つまり、なまじUV-LEDの成功体験を積んでしまったので、何か新しいことをやろうとすると、そんなものはできない、売れない、儲からないと、結論を急ぎがちだが、見込みがなさそうでもやってみることを心掛けている。


そんな中で試作したのが12mm x 12mmの小さな基板に1.05mm x 1.05mmの大面積UVチップを25個密集させて実装した試作品だ。こんなに密集させると放熱が十分できないので、十分な効率が得られないことは最初からわかっていたが、この試作の目的は疑似大面積チップ。すなわち大きな5mm x 5mm角の大きなチップを作るのは技術的に困難だが、密集実装して同様の発光を得られないかという思惑だ。

試作品

結果としては雰囲気の温度をマイナス20℃に下げた環境において波長365nmで4W、期待値14Wに対して29%。波長385nmで8W、期待値22Wに対して36%の結果しか得られなかったが、この失敗は別の角度から見ると、単位面積当たりの照度が、波長365nmで4W/cm²、波長385nmで8W/cm²の光源を得たということであり、スポット照射ではなく面照射でのUV照度としては世界最高クラスを達成した。

試作品

こういう失敗、出来損ないを沢山作ることが研究開発だと認識している。これらの研究開発はNEDOの補助によるものであり、日本の産業競争力強化のためにも何としても結果に結び付けなければならない。

世界不況の厳しい時代を生き抜くには、企業も個人も、環境に柔軟に適合し、変わることを恐れてはいけない。リストラの厳しい現実を受け止め、それを乗り越え、変わることができた者しか生き残れない。怒りを前向きなパワーに切り替えることができれば何も恐れるものはない。

平成26年02月05日

変わる覚悟

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