Chapter 96
設立15周年を迎えた。第15期決算も好決算で締めくくることができた。これも皆様のご支援の賜物であり、心から感謝申し上げる。本社工場の無事故・無災害記録は5100日を超えた。2001年4月に竣工して以来一切トラブルを起こしていない。半導体製造工場なので危険物も扱うが、それらを当たり前に管理してきた結果と言える。人間は、当り前のことを当り前にすることが苦手な動物である。ともすれば、手や気を抜こうと試みる。研究開発も限界に達したと手を休める。そういう気の緩みを戒めて当り前のことをしてきた。
思い返せばこの15年間、青色LEDが急激に成長し成熟する姿を目の当たりにした。
日亜化学工業の創業者小川信雄氏が、たとえ事業化したとしても100億円しかマーケットがないと嘆いたビジネスは1兆円になり、ノーベル物理学賞を受賞した。私が会社を設立した当時の趣旨書には、将来UV-LEDが照明分野その他に応用され、全てのLEDがUV-LEDに集約されると書いたが、15年経った今尚、その目論見は実現できていない。同時期に産声を挙げた様々なベンチャー企業は、IT系であれば、PCインターネット、iモード、スマホといったようにめまぐるしく変化する情報通信業界の荒波の中で、ある者は消え、ある者は一世を風靡したが落ちぶれた。これらの変遷は15年という年月がベンチャー企業にとっていかに長いかということを感じさせる。
企業が生態系に於いて淘汰されることは、厳しい自然の摂理と同じである。草は冬になると枯れて種を残す。木は葉を落とし厳しい寒さに備える。そして、春の訪れとともに一斉に芽を吹く。草木は迷うことなく当り前を繰り返す。しかし、人間は愚かにも自然法則に背こうと抗う。弊社の事業規模は、その知名度とは裏腹に驚くほど小さい。15年の社歴と半導体という事業分野を考慮すると非常識と言える。その小ささを可能にしているのは、徳島大学、ソウル・バイオシス社他、多くの企業との提携である。役割を最小化することで効率的な運営を実現している。厳しい環境に適応するための必然と言える。UV-LEDはまだ芽を吹いた程度の状況にある。15年もかけて芽吹くというのは気の長い話だが、蝉(せみ)が土の中で10年近く幼虫として過すことを考えれば、それ程長いとは言えないのかもしれない。私は、周りのベンチャー企業が急速に発展するのを横目で見ながら、ずっと焦りを感じて来た。そして、今年こそと思いながら飛躍するタイミングを見計らっている。
焦っても仕方ない。流れに身を任せるしかない。それは、力みなく泳ぐトップ競泳選手のスイミングフォームと似て、早く泳ごうと力めば力むほど体力を消耗し、水の抵抗が増す。すなおに振りぬかれたバットの芯で捉えられたボールはスタンドに吸い込まれる。
これから開花するUV-LED事業に於いて、我々が何処にポジショニングすべきか?
私の眼には、そこにしか居場所がないように見える。
平成27年04月13日
15年目の蝉のつぶやき