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ナイトライド・ストーリー

Chapter 97

昨期は好決算だったが、今期も同様になるとは限らない。

私は、今期が正念場になると見ている。その理由は、競合各社との競争と、遅れて始まった製造現場におけるCO2削減の動きである。今日の日本経済新聞がトヨタ自動車を初めとする各製造業の取り組みを紹介しているが、製造過程からエコであることが消費者から共感を得られる時代が幕を開ける。同じ性能ならば安いに越したことはないが、新興国の生活レベル向上に伴い、CO2排出量が急増したことで地球温暖化が顕著になった。各地で頻発する自然災害、異常気象の原因を単なる一時的兆候と片付けるのは難しい。営利を追求する企業が、マーケティング的に消費者から共感を得られる程、事態は悪化した。消費過程のみならず製造過程に於いてもエコを謳うことで、ブランドイメージを高めることが可能な価値観が醸成され始めた。

既に多くのLEDメーカーと外部メーカーがUV-LED市場に参入している。紫外線ランプは、2020年の水銀全廃を決議した水俣条約に於いて、例外として適用を免れているが、消費電力と廃棄物という観点から、資源の無駄使いという非難は免れない。賢明な企業は既にそれに向けた取り組みを本格化している。

弊社は、15年掛けてUV-LEDの事業化に取り組んできた。私の知る限りUV-LED単独で事業採算が合っている世界唯一の会社である。その苦心は前章でも触れた通り、順風満帆でやってきた訳ではない。むしろ血の滲むような泥仕合を続けて来た。まさに蝉の一生である。今、この瞬間にも、これから始まる決戦に向けて作戦を練り、準備を進めている。

UV-LEDという遅咲きの技術開発に携わったおかげで、未だに最先端という肩書を貼っていられることは好都合である。LED業界に限らず幅広く、フラットディスプレー、半導体、更には物理学といったカテゴリーに於いて、エンジニアでもないのに論文の執筆依頼や講演の講師として招かれる。

私のことを厚顔無恥な自己顕示欲の塊のようだと受け止める人がいる。そのことを否定するつもりはない。しかし、好んでそうしているのではなく、UV-LEDを世に知らしめるため、会社が存続し続けるために、そうすることが必要だった。分不相応として断る方が簡単だったが、背伸びして受けざるを得なかった。

今でこそ、UV-LEDの将来を疑う人は多くないが、少なくとも私がSSTから依頼を受けた去年の初頭の時点に於いてさえ、懐疑的な意見が大勢を占めていた。

生まれつき天才的な才能で一世を風靡するスティーブ=ジョブズや、マーク=ザッカーバーグならもっとうまくやったかもしれない。しかし、そのような才能に恵まれなかった私は泥臭く這いずり廻るしかない。だから、他人になんと言われようと死ぬまで這いずり廻る覚悟だ。

平成27年05月20日

厚顔無恥なUV-LED伝道師

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