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ナイトライド・ストーリー

Chapter 98

第15期株主総会を無事終了した。普段、株主を意識して仕事することはあまりないので、これを機会に株主総会の意義を少し考えてみたい。こう書くと、株主の中にはけしからんと言いだす方もおられるかもしれないが、創業当時、株主からの追求を恐れるあまり、売れる製品もないのに東京営業所を開設したり、できる筈もないのに上場準備と称して監査法人、主幹事証券会社とコンサル契約を結ぶという愚行によって、手持ち資金を減らしてしまった。株主のご機嫌を取ったつもりだが、結論としては業績が上がることしか株主のご機嫌を取る方法はない。

会社は誰のものかという質問に対して、会社法では会社は株主の物で営利を追求するために存在すると規定されている。これは、学校は誰の物かという質問と同じで、公立校なら公の物だが、一般的感覚では、学校は学生の物であり、先生の物でもPTAの物でもない。株とは、会社の価値を証券化したものだから、確かに株を買い占めれば私物化できる。しかし、そこで働く従業員が、株主の思惑通りになるかは別問題である。会社の意思決定機関である取締役会は、取締役は従業員ではないが、感覚的には従業員代表である。

私は、株というギャンブル性の高いものと会社という確実性を要求されるものが相容れるものか分からない。投機目的で株を取得し、株の価格が上がることだけを望む株主とそこで働く従業員の幸せがイコールにはならない。その証拠に、上場企業が業績悪化を理由に従業員を解雇すれば、それを好感して株価は上昇する。しかし、それが悪いと言っているのではない。企業は、厳しい競争の中で淘汰され、生きることを許された者しか生き残れない。特に、事業採算の合わない事業は切り離さざるを得ない。昨日の新聞に独オスラム社が、白熱電球事業を分社化するという記事が載っていた。また、既に業界首位のフィリップス社は、LED事業を含む照明事業をファンドに売却した。

会社は、誰の物かという議論に戻ると、会社は、従業員にとって、所属し成果を挙げることで評価され、学校と違って給料ももらえるありがたいところではあるが、利益を生まなくなった場合は、切り捨てられる。従業員は、会社がそういう厳しいところであり、従業員一人一人の努力なくしては成り立たないということを知らなくてはならない。だから、一日も早く役員に昇進して会社を自分たちの意思通りに操れるようになるべきだ。

結論としては、会社の所有権は株主にあるが、実質的には従業員即ち営利を追求するために滅私奉公する者の物だと思う。

株主総会は、1年に1度だけ、株主が、取締役会に対して、思いを打ち明けることができる機会である。なにやら七夕のようなせつない感覚だが、株主は所有者であるにも関わらず、普段は会社の敷地に入ることさえも許されていない。矛盾を抱えたルールだが、結局、株とは会社の価値を証券化した一金融商品に過ぎないことがわかる。

私は弊社の株主でもあるので、お許しいただきたいが、株主総会とは経営者と従業員が、営利を目的にビジネスを実践し、1年間の総括として株主に報告する儀式を言い、株主が堂々と敷地に足を踏み入れることができる唯一の日である。

ちなみに、今年の総会の参加者は創業以来初めてゼロだった。

平成27年06月24日

第15期定時株主総会を終えて

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